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【対談】内部だけで問題解決を図ることの危険性

井上弁護士(以下「井上」):学校法人や教育機関を巡る法律問題としては、いじめ問題や体罰問題以外にも、いわゆるハラスメント問題や学校事故の問題、いわゆるモンスターペアレンツ問題等がありますが、湊先生がこれまで多くの案件を担当された経験から、共通する問題点にはどういったものがありますか。

湊弁護士(以下「湊」):私は、実母がかつて大学の学長を務めていたという経緯もありまして、ずっと以前から学校問題には強い関心を持ち、様々の案件に取り組んできました。そうした経験から、様々の案件に共通して挙げられる問題には3つあると思っています。

① ルールが徹底していないことによる危険性

まず第1に、事前のルール作りがずさんであるということです。例えば、先ほど述べた「懲戒」と「体罰」の区別についてそうですが、どこまでが「懲戒」として許され、どこからが「体罰」として禁止されるのだというルールがあいまいなことが多くあります。

教職員全てが基本的にはルールに従って行動すれば、多くの問題は事前に回避することができるはずです

その事前のルール作りがずさんになってしまっているということが言えます。

本来であれば「懲戒」として許されるはずの行為、場合によっては教職員としてやるべき行為、求められる懲戒行為ができなくなってしまって、例えば、児童生徒の自殺といった大問題にまで発展してしまうということがありますね。

井上さんが先ほど挙げたハラスメント問題と学校事故の問題について言 えば、どこの学校法人や教育機関にも就業規則に懲罰事由や解雇事由等の定めがあるで しょうが、余りに緩い規則ですと正しい懲罰等が行われず、現場の士気を下げるばかりか、社会からの信頼を失う事態になってしまいますし、そうかといって余 りに必罰・厳罰主義ですと、後々懲罰・解雇対象者から無効を主張されて争われかねません。

ですから、ここでも、正しいルール作りが大切ですが、そのためには、最終的には訴訟にまで発展し得るという意識を持ち、過去の裁判例を集積・分析するという作業は不可欠ですね。

あるいは、モンペア問題、特に、話題になっている給食費の未納問題について言えば、最初は電話や手紙で支払を求めるわけですが、それでも応じなければ支払督促、あるいは民事訴訟といった法的強制力を用いないと支払が得られないことがあります。

電話や手紙についても、ずっと担任教職員だけが対応しているのでは日常業務に支障が生じてしまいますから、いずれかの段階で教職員の手を離れて別の人が対応するほかなくなる。

どこまで滞納すれば、あるいは、幾ら滞納すれば、どの手段まで実行するのかといったルール作りがあれば、教職員としてもそこまでは一所懸命やろうと思えるでしょうが、先が見えないのでは一人で問題を抱えしまうことにつながります

井上:様々の法律問題は全て、裁判例の集積と分析が大切だということですね。第2の問題は何ですか。

② 初動が遅いか間違っているために問題が拡大する危険性

:第2の問題は、いざ問題が発生した時の初動体制、初動の取組が遅いか、あるいは、取組方法が間違っているために問題を大きくしてしまうケースが非常に多いことです。

事前のルール作りがずさんであるのは、いわば論外ですが、仮に事前のルール作りをしっかりとやっていたとしても、個別案件ではやはり教職員と児童生徒、あ るいはその保護者との間で認識のズレが生ずることがあり、問題になってしまう場合というのはある程度避けられません。

問題が発生したときに、いかに迅速に対処するかが大切です。

病気を放置しておくと、やがては悪化し、手が付けられなくなりますよ ね。その時点で病院へ駆け込んでも、もう手遅れということがあるわけです。問題という のは、病気と同じです。発生してから対処までの時間が遅ければ遅いほど、問題は必ず悪化し、大きくなりますので、いわば時間との勝負だと考えて、可及的速 やかに対処することが大切です。

いかに迅速に対処しようとしても、対処の方法が誤っているのでは、問題の解決には逆効果になりますので、正しい対処、取組が大切です

例えば、問題が発生した際、一番最初にすべきことは問題の正確な把 握、つまり事実調査ですが、学校法人や教育機関の関係者は、一方当事者の説明だけを聞いて足れりとしたり、一応は当事者双方の説明を聞くけれども通り一遍 の平板に聴き方に終始してしまったり、単に聴取するだけで客観的な裏付けの収集がおろそ かになってしまったり、ということがあります。

事実調査の正しいやり方については、関係者全員から漏れなく話を聞くことと、客観的な裏付け をとって説明内容を吟味することが不可欠です。学校法人や教育機関の経営に携わる方々は、元々事実調査を仕事にされているわけではありませんから、どうし ても不慣れです。また、内部で処理しようとする場合、事情聴取をする側と、聴取される側とが面識を持っている場合がありますね。

それともう1つ、組織内部で処理しようとする場合にありがちな問題を指摘しておかねばなりません。

それは、いわゆるレピュテーションリスクを恐れる姿勢です。 つまり、悪評が世間に知れ渡り社会的信用が低下する事態を恐れる余 り、内々で処理しようとしてしまうことです。確かに、問題が世間に明るみに出てしまう と、世間は、「あの学校は問題を起こした。」と評価するでしょうし、学校法人や教育機関の経営に携わる者としては、そうした評価・評判は是非とも避けたいものでしょう。

しかしながら、内々で処理しようとすると、どうしても対処が遅れたり、また、事実調査が不徹底になったりします。

何しろ、事情聴取する側と、聴取を受ける側とが面識を持っている可能 性があるわけですから、聴取する側としては、心のどこかに遠慮の気持ちが芽生えてしま い、調査に消極的になったり手心を加えたくなったりしますし、聴取を受ける側としても、知っている相手に話したくないなという気持ちになるんですよ。

こうなると、問題の解決は長期化しますし、適切な解決も難しくなります。しかも、こうした誤った対処は、巧妙に隠そうとしても、いずれ必ず露呈します。その時、世間はどう評価するでしょうか。「あの学校は、問題を起こした。」という評価だけでは済みません。

世間は、「あの学校は、問題を隠蔽しようとした。そんなところに安心して子供を任せられない。」と評価するのではないでしょうか。

井上:そうなると、完全に逆効果ですね。
問題が発生したときには、適正に、公明正大に対処することが必要なのですね。

公明正大で適正な対処をしていれば、問題が世間に知れてしまったときでも、「あの学校は、問題を起こしたけれども、きちんと調査をして立て直しを図っている。今後への期待が持てるな。」という評価をしてくれるでしょうね。では、第3の問題は何ですか。

③ 弁護士への相談が遅いために事態が手遅れになる危険性

:第3の問題 は、先ほど説 明したルール作りの問題や、初動体制の問題とも関連しますが、法律専門家である弁護 士に相談するタイミングが遅いということが挙げられます。弁護士は、いわばトラブルを法的に解決する専門家ですが、相談のタイミングが遅く、事態が悪化し てしまってから相談を持ち込まれても、弁護士といえどもどうすることもできなくなってしまっていることがあります。

井上問題が発生したら、それが大きくなる前に、まずは弁護士にいち早く相談するという姿勢が大切なのですね。

:私が弁護士だからということで、宣伝のために言うわけではありませんが、もっと早く弁護士に相談してくれていたならば、幾らでも適正で円満な解決が図れたのに、と残念に思うことは本当に多いというのが実感です。