取締役会に関する会社法上の規定について弁護士が基礎知識から解説

取締役会に関する会社法上の規定について弁護士が基礎知識から解説

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取締役会の会社法上の規定の基礎知識

取締役会は取締役全員で構成され、①会社の業務執行の決定②取締役の職務の執行の監督③代表取締役の選定及び解職を行う機関です(362条2項)。
以下、取締役会の開催・運営に関する会社法上の規定を確認していきましょう。

取締役会の決議事項とは

取締役会は、以下の事項その他の重要な業務執行の決定を行います。これらの事項について、取締役会は取締役に委任することができないとされています(362条4項)ので、必ず取締役会の決議を経なければなりません。

①    重要な財産の処分及び譲受け
②    多額の借財
③    支配人その他の重要な使用人の選任及び解任
④    支店その他の重要な組織の設置、変更及び廃止
⑤    社債を引き受ける者の募集に関する重要な事項として法務省令で定める事項
⑥    内部統制システムの構築に関する決定
⑦    定款の定めに基づく取締役会決議による役員及び会計検査人の会社に対する責任(426条1項、423条1項)の免除

そのほか、会社法上、取締役会で決議しなければならない事項が個別に定められています。よく行われるものとしては以下のような事項が挙げられます。

・    譲渡制限株式の譲渡・承認取得(139条1項)
・    株式分割(183条2項)
・    株主総会の招集に関する事項の決定(298条4項)
・    代表取締役の選任・解任(349条3項、362条2項3号)
・    利益相反取引・競業取引の承認(356条1項、365条1項)

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取締役会の報告事項とは

各取締役はその任務として取締役の職務執行を監督しなければなりません。これを実効性あるものとするために、代表取締役は3ヶ月に1回以上、自己の職務の執行の状況を取締役会に報告しなければならないとされています(363条2項)。よって、原則として3ヶ月に1回は取締役会を開催しなければならないこととなります。

取締役会が招集されておらず、このような報告が行われていなかった場合、各取締役は職務執行という任務を怠ったとして、会社に対して損害賠償責任を負うことがあります(423条1項)。

取締役会の招集権者とは

取締役会は、各取締役がこれを招集します(366条1項本文)。ただし、取締役会を招集する取締役を定款または取締役会で定めた場合は、当該取締役がこれを招集します(366条1項但書)。

招集権を有しない取締役も、招集権を有する取締役に対し、取締役会の目的である事項を示して、取締役会の招集を請求することができます(366条2項)。この請求があった日から5日以内に、請求日から2週間以内の日を期日とする取締役会の招集の通知が発せられない場合、この請求をした取締役は、取締役会を招集することができるとされています(366条3項)。

よって、取締役会の不開催については、招集権をもたない取締役についても、招集請求措置等を行わなかったとして責任を問われることがあります。

なお、監査役や株主についても一定の場合には取締役会の招集を請求したり直接招集したりすることができます(367条1項2項3項、383条2項3項)。

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取締役会の招集通知とは

取締役会を招集する者は、取締役会の日の1週間前(これを下回る期間を定款で定めた場合には、その期間)までに、各取締役及び各監査役(監査役設置会社の場合)に対してその通知を発しなければなりません(368条1項)。
なお、取締役及び監査役全員の同意があるときは、招集の手続を経ることなく取締役会を開催することができます(368条2項)。

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取締役会の議事の運営と決議

取締役会の決議方法

取締役会の決議は、議決に加わることができる取締役の過半数(これを上回る割合を定款で定めた場合には、その割合以上)が出席し、その過半数(これを上回る割合を定款で定めた場合には、その割合以上)をもって行います(369条1項)。取締役会における議決権は1取締役について1個です。

取締役会の決議について特別の利害関係を有する取締役は、議決に加わることができません(369条2項 「特別利害関係取締役の例 参照)。この特別利害関係取締役の数は、定足数・決議要件の数に算入しませんが(369条1項)、当該取締役に対する招集通知は必要です(東京地裁昭和63年8月23日判決)ので注意しましょう。

また、議長となっている取締役が特定の議題については特別利害関係取締役にあたる場合、当該取締役は議長にはなれないとする判例があります(最高裁平成4年9月10日判決)。

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取締役会の書面決議等

取締役は原則として取締役会に出席して決議を行わなければなりませんが、会社法上、一定の範囲でこの例外が認められています。
すなわち、取締役が決議事項として提案をした事項について、当該提案につき取締役の全員(当該事項について議決に加わることができる者に限る)が書面または電磁的記録により同意の意思表示をしたときは、当該提案事項を可決とみなし、決議を省略することができます(書面決議、370条)。

この方法によって、迅速な判断を要する事項や重要性の低い事項について取締役がわざわざ一同に会することなく決議することが可能となっています。

ただし、これを定款に定めておくことが必要であり、また、監査役設置会社にあたっては監査役が当該提案について異議を述べたときは書面決議は認められません(370条)。

取締役会への報告事項についても、これを省略する制度があります。具体的には、取締役、監査役等が取締役(監査役設置会社においては取締役及び監査役)の全員に対して取締役会に報告すべき事項を通知したときには、当該事項を取締役会に報告することを要しないとされています(372条1項)。

もっとも、取締役会による代表取締役に対する監督機能を果たすため、代表取締役による3ヶ月に1回以上の業務執行状況の報告に関する取締役会については、これらの制度は認められません(372条2項、363条2項)。

取締役会の瑕疵ある決議の効力

取締役会における決議に瑕疵がある場合については、株主総会の場合と異なり、会社法上特段の定めはありません。したがって、何らかの瑕疵がある決議は原則として無効となり、誰でもいつでもこれを主張することができます。

ただし、軽微な手続上の瑕疵による場合やその他の事情によっては当該決議が有効と認められることもあります。例えば、取締役会の招集にあたり、取締役の一部の者に対する招集通知を欠いていたケースで、「特段の事情のない限り取締役会決議は無効になると解すべきであるが、当該取締役が出席してもなお決議の結果に影響がないと認めるべき特段の事情があるときは、当該瑕疵は決議の効力に影響がないものとして、決議は有効になると解するのが相当である」とした判例があります(最高裁昭和44年12月2日判決)。

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取締役会の無効な決議に基づく取引行為の効力

取締役会の決議を要する業務執行につき、代表取締役が決議に基づかず、または無効な決議に基づいて行った場合、当該取引行為も無効となってしまうおそれがあります。

例えば、取締役会決議を欠いた重要財産の処分行為につき、判例では、原則として有効であるが、相手方が決議を経ていないことを知りまたは知り得べかりしときは無効であるとされています(最高裁昭和40年9月22日判決)。

以上のように、取締役会決議に瑕疵がある場合、その後の取引行為の効力まで否定され、業務の円滑な遂行に支障をきたす事態となるおそれがあります。企業としては法定事項を遵守し、そのようなトラブルが起きないよう最善の体制を整えておくべきです。
 
 

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