取引先が民事再生手続を開始

取引先が民事再生手続を開始

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取引先が民事再生手続を開始

取引先につき民事再生手続が開始された場合、当該取引先に対する債権を全額回収することは困難ですが、民事再生手続においてどのように対応したらよいかを知っているかどうかで、当該取引先からの回収額に差が生じる可能性があります。

民事再生の場合、手続開始の申立てと同時に、裁判所から弁済禁止の保全処分が出されることが一般的で、この保全処分が出されると、債権者は、原則として、民事再生手続外において、債務者から弁済を受けることができなくなります。

そこで、債権者としては、民事再生手続を通じて少しでも債権が回収できるように、債権届出をしたり、再生計画案を検討して再生計画案に対する賛否を決定したりします

 

(1)注意すべきポイント

裁判所は、民事再生手続開始の申立てと同時に、債務者からの申立てに基づき、弁済禁止の保全処分を出すことが一般的です。

これにより、債権者は、民事再生手続開始の申立日以前の原因に基づき発生した債権につき、原則として、民事再生手続によらなければ弁済を受けられなくなります。
ただし、そのような債権であっても、弁済禁止の保全処分の例外として弁済が許される場合もありますので、債務者に対し、弁済禁止の保全処分の内容を問い合わせる余地はあります。

他方、債権の発生原因が民事再生手続開始決定以後にある場合、この債権には、原則として、弁済禁止の保全処分の効果が及ばず、再生手続によらずに弁済を受けることが可能であり、全額弁済され得る債権となります。

もっとも、債務者から新たな担保提供を受けるなどの行為は、管財人や監督委員から否認されるおそれがありますので、注意が必要です。

 

(2)債権届出とその効果

民事再生手続開始決定が出されたら、届出期間内に債権届出をする必要があります。
これを怠ると、失権してしまうのが原則です。

なお、民事再生手続開始の申立てがなされても、債務者所有の財産に抵当権などの一定の権利(別除権)を有する債権者(別除権者)は、原則として、民事再生手続外でこの権利を行使することができます。別除権の行使によって弁済を受けられないと見込まれる額については、民事再生手続においても権利を行使することができますので、弁済を受けられないと見込まれる額につき、債権届出をする必要があります。

債権届出の結果、再生債権者表に記載されると、確定判決と同一の効力が認められ、債権者は、債務者が弁済を怠った場合に、再生債権者表の記載を債務名義として、債務者に対し、強制執行手続を行うことも考えられます。

しかし、債権者が民事再生手続開始決定を知りながら届出期間内に故なく債権届出をしない場合で、かつ、債務者が債権の存在を知らない場合には、認否書に当該債権が記載されることがなく、再生計画認可の決定が確定すると、債権届出のされなかった債権は免責され、民事再生手続において弁済を受けることができなくなります。

もっとも、債権届出がなされない場合でも、債務者が債権の存在を知っている場合には、自認債権として認否書に記載されるので、弁済対象にはなります。ただし、自認債権には債権者集会における議決権がなく、また、他の債権に較べて遅い支払時期となります。

 

(3)再生計画案に対する賛否の決定

債権者は、民事再生手続に関する閲覧謄写請求や、債務者による債権者説明会などを通じて情報収集を積極的に行い、再生計画案のとおりに債務者が再生できるかどうかを判断し、再生計画案に賛成するかどうかを決定する必要があります。

再生の見込みの有無の判断のポイントとしては、①債務者の破綻の原因を除去することができるか、②大口の債権者や金融機関などの支援が得られるか、③再生によれば清算の場合と比べ有利な弁済が見込めるか、④債権者説明会や債権者集会において、上記①②に関する明確な回答があるか、というものが挙げられます。

 

(4)相殺を行う際の主な注意点

互いに債権を有している場合、相殺は債権回収手段として機能します(相殺の担保的効力などといわれます)。相殺については、様々な法的問題が存在するため、ここでは主な注意点のみを述べることとします。

まず、相殺をするためには、債権届出期間満了前に相殺適状になっている必要があります。そのため、予防法務的には、取引先との契約書において、あらかじめ「再生手続開始の申立て」を期限の利益喪失事由として規定して、将来に期限が到来する自働債権につき、上記再生手続開始の申立てによって期限の利益を喪失するようにしておく必要があります。

また、相殺の意思表示も、届出期間満了前に行う必要がありますので、早めに相殺の意思表示をすることが肝要です。
 
 
 

 

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