廃棄物の概念

廃棄物の概念

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廃棄物の概念

(1) 「廃棄物」とは何か

廃棄物処理法2条1項は、「この法律において「廃棄物」とは、ごみ、粗大ごみ、燃え殻、汚泥、ふん尿、廃油、廃酸、廃アルカリ、動物の死体その他の汚物又は不要物であつて、固形状又は液状のもの(放射性物質及びこれによつて汚染された物を除く。)をいう。」と定めています。

簡単にいうと、廃棄物というのは、人間の生活活動や事業活動において、使用された後に不要となった物質や製品のことを指します。これには、固形物、液体、ガスの形態を問わず、再利用や再生が行われない限り、捨てられる運命にあるものすべてが含まれます。

(2) 廃棄物と有価物の区別―総合判断説-

ある物が廃棄物と有価物のいずれに該当するかで、廃棄物処理法の適用の有無が決まってきますので、両者の区別は実務上も非常に重要です。

この点について、判例や学説の多くは、いわゆる総合判断説に基づいて判断しておりますので、この点について説明します。

ア 総合判断説の内容

総合判断説は、物が廃棄物か有価物かを判断する際に、単一の基準ではなく、複数の要素を総合的に考慮するという考え方です。

具体的には、廃棄物とは、占有者が自ら利用し、又は他人に有償で譲渡することができないために不要となったものをいい、これらに該当するか否かは、その物の性状、排出の状況、通常の取扱い形態、取引価値の有無及び占有者の意思等を総合的に勘案して判断すべきものとされています(環廃産発第050812003号平成17年8月12日「行政処分の指針について」より引用)。

イ 総合判断説に立つ判例(おから事件判決・最高裁判所平成11年3月10日第二小法廷決定)

この事案は、豆腐製造工場から排出される副産物である「おから」が廃棄物か否かが争われた事件です。おからは食用にされ、スーパーマーケットなどでもお惣菜として販売され、取引されていることからすると有価物とも考えられます。他方、現実には、豆腐は大量生産されており、それ自体が腐敗しやすいという特性を有し、多くの豆腐工場では廃棄物として排出していたり、あるいは、処理料金を支払って引き取ってもらった上で、おからとして販売されているなど、有償売却されていないといった実態も認められました。

こうした現実を踏まえて最高裁判所は、本件においてはおからは廃棄物に該当すると判断しました。

その結果、無許可でおからを受け入れていた業者は、産業廃棄物の無許可営業罪の有罪判決を受けるに至りました。

以下、判旨を示します。

「右の産業廃棄物について定めた廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行令(平成5年政令第385号による改正前のもの)2条4号にいう「不要物」とは、自ら利用し又は他人に有償で譲渡することができないために事業者にとって不要になった物をいい、これに該当するか否かは、その物の性状、排出の状況、通常の取扱い形態、取引価値の有無及び事業者の意思等を総合的に勘案して決するのが相当である。そして、原判決によれば、おからは、豆腐製造業者によって大量に排出されているが、非常に腐敗しやすく、本件当時、食用などとして有償で取り引きされて利用されるわずかな量を除き、大部分は、無償で牧畜業者等に引き渡され、あるいは、有料で廃棄物処理業者にその処理が委託されており、被告人は、豆腐製造業者から収集、運搬して処分していた本件おからについて処理料金を徴していたというのであるから、本件おからが同号にいう「不要物」に当たり、前記法律二条四項にいう「産業廃棄物」に該当するとした原判断は、正当である。」

ウ 廃棄物性が問題となる具体例

(ア) 使用済みのオフィス機器

使用済みのオフィス機器は、その状態や需要に応じて、廃棄物と有価物のどちらにも該当する可能性があります。動作不良の古いプリンターが、修理やリサイクルが不経済である場合、それは廃棄物と見なされる可能性が高いです。一方で、使用はされていないがまだ機能するPCは、適切な市場で販売または寄付される場合、有価物と考えられることになるでしょう。

(イ) 建設現場からの廃材

建設現場から発生する木材や金属廃材も、再利用やリサイクルの可能性に基づいて総合的に判断されることになります。これらの材料が適切な条件下で再利用される予定であり、かつそのための経済的合理性が認められる場合、これらは有価物と見なされることがあります。そのような事情が認められない場合には、取引価値がないと考えられますので、廃棄物と判断されることになるでしょう。

(3) 一般廃棄物と産業廃棄物

産業廃棄物とは、事業活動によって生じた廃棄物のうち特定の20種類のことをいい、それ以外のものが一般廃棄物とされています。

産業廃棄物と一般廃棄物は、誰が処理責任を負担するかの違いもあります。産業廃棄物は排出事業者が、一般廃棄物は区市町村が、その処理責任を負担することになっています。

産業廃棄物を一般廃棄物として処理したり、一般廃棄物を産業廃棄物として処理した場合には、不法投棄がなされたものと評価されますので、5年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金、又はこれらが併科されてしまう可能性があるので要注意です。

(4) 産業廃棄物の種類と具体例

業種区分 産廃の種類 産廃の具体例
すべての事業活動から排出されるもの 燃え殻 焼却残灰、石炭がら、焼却炉の残灰等
汚泥 排水処理や各種製造生産工程で排出された泥状のもの、ビルピット汚泥等
廃油 鉱物性油、潤滑油、絶縁油等
廃酸 写真定着廃液、廃硫酸、廃塩酸等
廃アルカリ 写真現像廃液、廃ソーダ液、金属せっけん廃液等
廃プラスチック類 廃タイヤ、合成繊維くず、合成ゴムくず等
ゴムくず 生ゴム、天然ゴムくず
金属くず 鉄鋼や非鉄金属の破片、研磨くず、切削くず等
ガラスくず、コンクリートくずおよび陶磁器くず ガラス類、製造過程で生じたコンクリートくず、レンガくず、陶磁器くず、石膏ボード等
鉱さい 鋳物廃砂、電気炉等溶解炉かす、不良石灰、粉炭かす等
がれき類 工作物の新築や除去で生じたコンクリート破片やアスファルト破片等
ばいじん 大気汚染防止法に定めるばい煙発生施設や産業廃棄物焼却施設で発生したばいじんで、集塵施設によって捕集されたもの
特定の事業活動に伴って排出されるもの 紙くず 建設業、パルプ製造業、製紙行、紙加工品製造業、新聞業、出版業、静本業、印刷物加工業から生じた紙くず
木くず 建設業、木材・木製品製造業、パルプ製造業、輸入材木卸売業から生じた木材片やおがくず等
繊維くず 建設業に係るもの、衣服その他の繊維製品製造業以外の繊維工業から生じた木綿くず等
動植物性残さ 食料品製造業、医薬品製造業、香料製造業から生じる動物又は植物に係る固形状の不要物
動物系固形不要物 と畜場で処分した獣畜や食鳥処理場で処理した食鳥に関する固形状の不要物
動物のふん尿 畜産農業から排出される牛や豚などのふん尿
動物の死体 畜産農業から排出される牛や豚などの死体
以上の産業廃棄物を処分するために処理したもので、上記に該当しないもの

なお、産業廃棄物を一般廃棄物として処理したり、一般廃棄物を産業廃棄物として処理した場合には、不法投棄がなされたものと評価されますので、5年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金、又はこれらが併科されてしまう可能性があるので要注意です。

 
 
 

 

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