取締役会設置会社の株主総会の開催・運営をめぐるリスク
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取締役設置会社の株主総会の開催・運営をめぐるリスク
取締役会設置会社における株主総会に関する会社法上の規定
取締役会設置会社における株主総会は、株主を構成員として会社の基本的事項について意思決定する必要的機関です。
以下、株主総会の開催・運営に関する会社法上の規定を確認していきましょう。
■ 決議事項
取締役会設置会社における株主総会では、会社法に規定する事項または定款に定めた事項に限り決議することができます(295条2項)。
取締役会設置会社において株主総会での決議事項とされている主なものとしては、
①定款変更、解散、合併など会社の組織・事業の基礎的変更に関する事項
②計算書類の承認や株式の第三者有利発行など株主の重要な利益に関する事項
③取締役など役員の選任・解任に関する事項
④役員報酬の決定など役員の専横防止に関する事項
⑤事後設立など法規制の潜脱防止に関する事項
などがあげられます。法令・定款に定められた事項以外につき株主総会での決議がなされても、それは無効となります。
なお、取締役会非設置会社については上記のような制限はなく、株主総会の本質に反しない限り会社の一切の事項につき決議することができます。
■ 開催時期と開催地
株主総会は、少なくとも毎事業年度の終了後、一定の時期に開催しなければなりません(定時株主総会、296条1項)。このほか、必要があればいつでも臨時に招集することができます(臨時株主総会、296条2項)。
招集地について、旧商法下では原則、本店の所在地またはこれに隣接する地に限られていましたが、現在そのような規制は撤廃されました。そこで、株主の分布状況等により本店所在地とは異なる地に開催場所を定めることができます。
もっとも、株主の出席が困難になるような地で株主総会を開催した場合は株主総会の招集手続が著しく不公正なときにあたるとして無効となるおそれがありますので注意が必要です。
■ 招集手続
株主総会の招集は、取締役会の決議に基づき代表取締役が行うのが原則です(296条3項)。このとき、取締役会は次の事項を定めなければなりません(298条1項、4項)。
① 株主総会の日時・場所
② 株主総会の目的事項
③ 株主総会に出席しない株主が書面によって議決権を行使できることとするときは、その旨(書面投票制度と電子投票制度 参照)
④ 株主総会に出席しない株主が電磁的方法によって議決権を行使することができることとするときは、その旨(書面投票制度と電子投票制度 参照)
⑤ その他法務省令(規則63条)で定める事項
②について、招集者が会議の目的と定めて株主に通知した事項以外については基本的に株主総会で決議できません(309条5項)ので、漏れなく記載するよう注意が必要です。
なお、取締役会非設置会社の場合は、取締役が上記事項を決定し、招集を行うことになります(296条3項、298条1項)。
■ 招集通知
株主総会を開催するにあたっては、株主全員に出席の機会と準備の余裕を与えるために、以下のとおり招集通知を行うことが定められています。
まず、招集通知は会社法上定められた時期までに発しなければなりません。その方法として、取締役会設置会社においては、株主総会の目的など株主総会の招集にあたって取締役会で決定した事項を記載した書面(株主の承諾がある場合は電子メールなどの電磁的方法も可)によって株主総会を招集する必要があります(299条2項~4項、298条1項)。
もっとも、株主全員の同意があるときには、法定の招集期間を短縮することや、法定の招集手続を経ることなく開催することが認められています(300条。書面投票制度や電子投票制度を用いている場合を除く)。
さらに、招集に必要な手続を欠いて開催された株主総会も、株主全員がその招集に同意して株主総会に出席していれば株主総会は有効に成立します。これに代理出席が含まれる場合であっても、株主が会議の目的を了知した上で委任状を作成し、これに基づいて選任された代理人を含めて株主全員が出席していれば、株主総会は有効に成立するとされています(最高裁昭和60年12月20日判決)。
議事の運営と決議
◆ 取締役等の説明義務
株主総会の中で、取締役、監査役は株主から特定の事項につき説明を求められた場合には当該事項について必要な説明をしなければなりません(314条本文)。十分な説明を行わずに決議を強行した場合には当該決議の取消原因になり得ます。ただし、①当該事項が株主総会の目的である事項に関しないものである場合、②説明をすることにより株主の共同の利益を著しく害する場合(例えば営業秘密にかかわる事項など)、③その他正当な理由がある場合として法務省令で定める場合には、取締役は説明を拒絶することができるとされています(314条但書)。
◆ 決議方法
株主総会では、原則として、各株主が保有する株主1株につき1個の議決権を有するものとし(308条1項)、多数決によって決議されます。多数決の要件については以下のとおり決議事項によって異なりますので注意が必要です。
①普通決議
法律または定款に定めのない通常の議案については、株主の議決権の過半数を有する株主が出席し(定足数)、出席した株主の議決権の過半数が賛成することにより可決されます。
定足数は定款によって増減できますが、役員の選任・解任議案の定足数を議決権の3分の1未満に減じることはできません(341条)。
②特別決議
会社の重要事項については、株主の議決権の過半数を有する株主が出席し(定足数)、出席株主の議決権の3分の2以上の賛成によって可決されます。これを特別決議といい、会社法上、特別決議を要する事項が定められています(309条2項)。
③特殊決議
以上のほか、より厳重な決議要件が定められている場合があります。例えば、取締役の会社に対する責任を免除するには総株主の同意を要します(424条)。
◆ 代理人による議決権行使
株主は代理人によって議決権を行使することができます。なお、代理人の資格を株主に限る旨の定款の定めも有効とされています(最高裁昭和43年11月1日判決)。正当な代理人の議決権行使を拒んだり、決議に参加する資格のない者をこれに参加させたりすると、決議取消原因になります。
◆ 議決権の不統一行使
株主が2個以上の議決権を有するとき、その有する議決権を統一しないで行使することができます(313条1項)。ただし、取締役会設置会社では、株主総会の日の3日前までに、議決権を統一しないで行使する旨及びその理由を通知する必要があります(313条2項)。
■ 瑕疵ある決議の効力
以上のとおり株主総会の運営・開催には様々な規定がありますが、実際にこれらの規定に反するような不備(これを「瑕疵」といいます。)があった場合、当該株主総会での決議の効力はどうなるのでしょうか。
当該決議は適法なものではないのですから、一般原則からすれば無効となるはずです。しかし、一旦なされた決議が当然に無効となると、株主、取締役、取引先等多数の関係者に大きな影響を与えかねません。
そこで、会社法では瑕疵の程度に応じて、①決議取消しの訴え(831条1項)②決議不存在確認の訴え(830条1項)③決議無効確認の訴え(830条2項)という三種類の訴えにより、決議の効力を否定することを定めています(「株主総会決議の瑕疵に対する訴え」参照)。
これらの訴えが認められると決議の効力が否定され、当該決議は初めからなかったものとなってしまいます。
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