使用者責任における被用者の使用者責任に対する求償の可否について研究しました。

判例研究

使用者責任における被用者の使用者責任に対する求償の可否について研究しました。

令和3年2月10日(水)に使用者責任における被用者の使用者責任に対する求償の可否について研究しました。

日時 令和3年2月10日(水)
場所 湊総合法律事務所 第1会議室
報告者 弁護士 湊 信明
内容 使用者責任における被用者の使用者責任に対する求償の可否について

第372回 判例・事例研究会

日時 令和3年2月10日

場所 湊総合法律事務所

報告者 弁護士 湊 信明

事件の表示 事 件 名 債務確認請求本訴、求償金請求反訴事件
事 件 番 号 平成 30 年(受)第 1429 号
決 定 破棄差戻し
第一審 被用者と使用者とが負担する損害賠償責務は「不真正連
帯責務」であり、「一方が自己の負担部分を超えて賠償債務
を履行した場合には、その部分について、他方に求償する
ことができる」としてこれを認め、本訴請求を認容した。
原審 「民法 715 条 1 項は、被害者保護のため・・・被害者が資力の
乏しいこともある被用者から損害賠償金を回収できない危
険に備えて、報償責任や危険責任を根拠にして、使用者に
その危険回避の負担を負わせたものであって、本来の損害
賠償義務を負うのは、被用者であることが前提とされてい
る。
…そうすると、民法 715 条 3 項の求償権が制限される場合
と同じ理由をもって、逆求償という権利が発生する根拠と
まですることは困難である。結果が公平に見えることがあ
るだけでは、理由とはならない」。これに対し、Xが上告受
理を申し立てた。
判決の要旨 「民法 715 条 1 項が規定する使用者責任は、使用者が被用
者の活動によって利益を上げる関係にあることや、自己の
事業範囲を拡張して第三者に損害を生じさせる危険を増大
させていることに着目し、損害の公平な分担という見地か
ら、その事業の執行について被用者が第三者に加えた損害
を使用者に負担させることとしたものである・・・[最判昭
32・4・30 民集 11 巻 4 号 646 頁、最判昭 63・7・1 民集 42 巻 6
号 451 頁参照]。このような使用者責任の趣旨からすれば、
使用者は、その事業の執行により損害を被った第三者に対
する関係において損害賠償義務を負うのみならず、被用者
との関係においても、損害の全部又は一部について負担す
べき場合があると解すべきである。
また、使用者が第三者に対して使用者責任に基づく損害
賠償義務を履行した場合には、使用者は、その業務の性格、
規模、施設の状況、被用者の業務の内容、労働条件、勤務態
度、加害行為の態様、加害行為の予防又は損失の分散につ
いての使用者の配慮の程度その他諸般の事情に照らし、損
害の公平な分担という見地から信義則上相当と認められる
限度において、被用者に対して求償することができると解
すべきところ…[最判昭 51・7・8 民集 30 巻 7 号 689 頁]、上記の場合と被用者が第三者の被った損害を賠償した場合
とで、使用者の損害の負担について異なる結果となること
は相当でない。
以上によれば、被用者が使用者の事業の執行について第
三者に損害を加え、その損害を賠償した場合には、被用者
は、上記諸般の事情に照らし、損害の公平な分担という見
地から相当と認められる額について、使用者に対して求償
することができるものと解すべきである。」

 

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