欠格要件
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欠格要件
(1) 内容
廃棄物処理法は、廃棄物の適正な処理を目的として規定されています。この目的を達成するには、廃棄物処理業者がその業を遂行するだけの適正を備えていることが必要です。そこで、廃棄物処理法は、法に従った適正な業の遂行を期待し得ない者を欠格要件として類型化し、廃棄物処理業から排除することができることにしています。
このような趣旨から、廃棄物処理法7条5項4号及び14条5項2号は、申請者が欠格要件に該当する場合には許可(施設設置許可、処理業許可)を受けることはできないものとしています。
同様の趣旨に基づき、廃棄物処理法7条の4及び14条の3の2は、産業廃棄物処理業者が欠格要件に該当するに至った場合には業許可が必要的に取り消されるものとしています。
(2) 欠格要件一覧
① 廃棄物処理法第7条第5項第4号 | ||
イ | 心身の故障によりその業務を適切に行うことができない者として環境省令で定めるもの | |
ロ | 破産手続の開始の決定を受けて復権を得ない者 | |
ハ | 禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない者 | |
ニ | この法律、浄化槽法(昭和58年法律第43号)その他生活環境の保全を目的とする法令で政令で定めるもの(注1)若しくはこれらの法令に基づく処分若しくは暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律(平成3年法律第77号。第32条の3第7項及び第32条の11第1項を除く。)の規定に違反し、又は刑法(明治40年法律第45号)第204条、第206条、第208条、第208条の2、第222条若しくは第247条の罪若しくは暴力行為等処罰ニ関スル法律(大正15年法律第60号)の罪を犯し、罰金の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない者 | |
ホ | 第7条の4第1項(第4号に係る部分を除く。)若しくは第2項若しくは第14条の3の2第1項(第4号にかかる部分を除く。)若しくは第2項(これらの規定を第14条の6において読み替えて準用する場合を含む。)又は浄化槽法第41条第2項の規定により許可を取り消され、その取消しの日から5年を経過しない者(当該許可を取り消された者が法人である場合(第7条の4第1項第3号又は第14条の3の2第1項第3号(第14条の6において準用する場合を含む。)に該当することにより許可が取り消された場合を除く。)においては、当該取消しの処分に係る行政手続法(平成5年法律第88号)第15条の規定による通知があった日前60日以内に当該法人の役員(業務を執行する社員、取締役、執行役又はこれらに準ずる者をいい、相談役、顧問その他いかなる名称を有する者であるかを問わず、法人に対し業務を執行する社員、取締役、執行役又はこれらに準ずる者と同等以上の支配力を有するものと認められる者を含む。以下この号、第8条の5第6項及び第14条第5項第2号ニにおいて同じ。)であった者で当該取消しの日から5年を経過しないものを含む。) | |
ヘ | 第7条の4若しくは第14条の3の2(第14条の6において読み替えて準用する場合を含む。)又は浄化槽法第41条第2項の規定による許可の取消しの処分に係る行政手続法第15条の規定による通知があった日から当該処分をする日又は処分をしないことを決定する日までの間に次条第3項(第14条の2第3項及び第14条の5第3項において読み替えて準用する場合を含む。以下この号において同じ。)の規定による一般廃棄物若しくは産業廃棄物の収集若しくは運搬若しくは処分(再生することを含む。)の事業のいずれかの事業の全部の廃止の届出又は浄化槽法第38条第5号に該当する旨の同条の規定による届出をした者(当該事業の廃止について相当の理由がある者を除く。)で、当該届出の日から5年を経過しないもの | |
ト | ヘに規定する期間内に次条第3項の規定による一般廃棄物若しくは産業廃棄物の収集若しくは運搬若しくは処分の事業のいずれかの事業の全部の廃止の届出又は浄化槽法第38条第5号に該当する旨の同条の規定による届出があった場合において、ヘの通知の日前60日以内に当該届出に係る法人(当該事業の廃止について相当の理由がある法人を除く。)の役員若しくは政令で定める使用人(注2)であった者又は当該届出に係る個人(当該事業の廃止について相当の理由がある者を除く。)の政令で定める使用人であった者で、当該届出の日から5年を経過しないもの | |
チ | その業務に関し不正又は不誠実な行為をするおそれがあると認めるに足りる相当の理由がある者 | |
リ | 営業に関し成年者と同一の行為能力を有しない未成年者でその法定代理人がイからチまでのいずれかに該当するもの | |
ヌ | 法人でその役員又は政令で定める使用人のうちにイからチまでのいずれかに該当する者のあるもの | |
ル | 個人で政令で定める使用人のうちにイからチまでのいずれかに該当する者のあるもの | |
② 廃棄物処理法第14条第5項第2号 |
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イ | (第7条第5項第4号イからチまでのいずれかに該当する者) | |
ロ | 暴力団による不当な行為の防止等に関する法律第2条第6号に規定する暴力団員(以下この号において「暴力団員」という。)又は暴力団員でなくなった日から5年を経過しない者(以下この号において「暴力団員等」という。) | |
ハ | 営業に関し成年者と同一の行為能力を有しない未成年者でその法定代理人がイ又はロのいずれかに該当するもの | |
ニ | 法人でその役員又は政令で定める使用人のうちにイ又はロのいずれかに該当する者のあるもの | |
ホ | 個人で政令で定める使用人のうちにイ又はロのいずれかに該当する者のあるもの | |
ヘ | 暴力団員等がその事業活動を支配する者 | |
注1)生活環境の保全を目的とする法令で政令で定めるもの
大気汚染防止法、騒音規制法(昭和43年法律第98号)、海洋汚染等及び海上災害の防止に関する法律(昭和45年法律第136号)、水質汚濁防止法(昭和45年法律第138号)、悪臭防止法(昭和46年法律第91号)、振動規制法(昭和51年法律第64号)、特定有害廃棄物等の輸出入等の規制に関する法律(平成4年法律第108号)、ダイオキシン類対策特別措置法、ポリ塩化ビフェニル廃棄物の適正な処理の推進に関する特別措置法
注2)政令で定める使用人
(1) 本店又は支店(商人以外の者にあっては、主たる事務所又は従たる事務所)の代表者
(2) 継続的に業務を行うことができる施設を有する場所で、廃棄物の収集若しくは運搬又は処分若しくは再生の業に係る契約を締結する権限を有する者を置くものの代表者
(3) 欠格要件該当性が特に重要となる事項
ア 注意すべき事例
上述のように、廃棄物処理法14条の3の2第1項、14条の6は、許可業者が欠格要件に該当するに至った場合には、必要的に許可を取り消さなければならないとされています。
以下のような事案では、たとえばその刑の執行が終わってから5年を経過していない等の場合には、廃棄物処理業の許可が取り消されてしまうことになりますから極めて重大な注意が必要です。
・廃棄物処理会社の役員、支店長又は工場長が、酒の席で他の客と口論になり、傷害事件を引き起こして傷害罪で罰金刑に処せられた事案。
・廃棄物処理会社の役員、支店長又は工場長が、道路交通法違反(ex.酒気帯び運転等)で懲役刑に処せられた事案。
・廃棄物処理会社の役員、支店長又は工場長が、業務上過失致死傷罪(ex.交通死傷事故等)で懲役刑に処せられた事案。
イ 特に注意すべき者
欠格事由に該当し得る者は広範にわたりますが、特に以下の者については注意が必要です。
① 役員(代表取締役、取締役、執行役等)
廃棄物処理法7条5項4号ヌ・ホによれば、代表取締役、取締役、執行役が後述するような欠格要件に該当する行為をすれば、必要的許可取消の対象となりますから注意が必要です。
なお、ここにいう執行役とは、指名委員会等設置会社において業務執行及び取締役会から委任された業務執行の決定を行う役員のことをいいます(会社法402条1項、418条)。他方、よく会社に執行役員が置かれていますが、これは役員ではなく従業員であり、ここにいう「執行役」には該当しませんので、注意してください。
② 政令使用人(支店長・工場長)
廃棄物処理法7条5項4号ヌは、「政令で定める使用人」についても適用される旨規定しています。
政令使用人については、廃棄物処理法施行令第4条の7が規定しており、ア本支店の代表者(代表取締役・支店長)、イ継続的に業務を行うことができる施設を有する場所で、廃棄物処理委託契約等を締結する権限を有する者がいる場所の代表者をいいます。
イが若干わかりにくいのですが、一般的には工場長、営業所長等が該当します。
なお、契約締結権限を有していれば、即、政令使用人に該当するというわけではありません。よく社内規程で部課長レベルに契約締結権限が付与されていることがありますが、この部課長が政令指定人になるのではなく、部課長が属している工場や営業所の代表者が政令指定人に該当することになりますので、注意が必要です。
③「これらに準ずる者と同等以上の支配力を有するものと認められる者」(大株主)
廃棄物処理法第7条第5第4号ヌ・ホは、「法人に対し業務を執行する社員、取締役、執行役又はこれらに準ずる者と同等以上の支配力を有するものと認められる者」は「役員」として扱われることになります。
よく5パーセント以上の株式を保有しているとこの条項に該当すると言われることがあるのですが、必ずそうなるというわけではありません。あくまでも「同等以上の支配力が認められるもの」と認められる場合に限られます。噂に惑わされず、支配力の程度をきちんと把握して対応することが肝要です。したがって、もし株主が欠格要件に該当するという理由で許可取消の対象とされそうになった場合には、告知聴聞の機会にしっかりと支配力の程度について弁明することが大事であると思います。
ウ 特に注意すべき欠格要件
欠格事由に該当する行為も多岐にわかりますが(欠格要件一覧参照)、上記イで述べた者が下記要件に該当する場合には特に注意が必要です。
① 禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない者
② 廃棄物処理法、浄化槽法等に違反し、罰金の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない者
③ 刑法204条(傷害)・208条(暴行)・222条(脅迫)・247条(背任)等に違反して罰金の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない者
上述した廃棄物処理会社の役員等が、酒の席で他の客と口論になり、傷害事件を引き起こして傷害罪で罰金刑に処せられた事案、酒気帯び運転により道路交通法違反で懲役刑に処せられた事案、交通死傷事故を起こして業務上過失致死傷罪で懲役刑に処せられた事案は、いずれも許可取消となる可能性があります。このような事態は経営をしているとあり得ることです。高いコンプライアンス意識を醸成することが極めて重要であることを十分に認識することが大切です。
(4) 欠格要件に該当したときの対応
欠格要件に該当しときは、2週間以内に欠格要件該当届を提出しなければならないことになっています。
欠格要件該当届の提出を怠った場合には、6ヵ月以下の懲役または50万円以下の罰金に処せられる可能性がありますから注意してください(廃棄物処理法29条1号)。