判例研究
内縁関係の破綻に関する損害賠償請求における過失について研究しました。
令和3年9月15日(水)内縁関係の破綻に関する損害賠償請求における過失について研究しました。
日時 | 令和3年9月15日(水) | |
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場所 | 湊総合法律事務所 | |
報告者 | 弁護士 石田 嘉奈子 | |
内容 | 内縁関係の破綻に関する損害賠償請求における過失について研究しました |
第387回 判例・事例研究会
日時 令和3年9月15日(水)
場所 湊総合法律事務所
報告者 弁護士 石田 嘉奈子
【判例】
事件の表示 | 事 件 名 損害賠償等請求事件 判 決 平22(ワ)33704号・平22(ワ)33729号 |
事案の概要 | ⚫ Xが、Y2に対し、同人がY1と不貞行為に及んだことによる内縁関係に係る内縁配偶者としての権利が侵害されたと主張して、不法行為に基づく慰謝料等の支払を求めた等の事案である。 ⚫ Y2は,Y1と同じ職場に勤めており,Xが平成15年秋ころに退職をするまでは,Xとも同僚又はその上司という関係にあった。Y2は,Y1がその上司になった後の平成21年6月ころから,Y1との間で私的な会話をするようになり,その中で,Y1は,Y2に対し,Xについて,長年同居しているが,単なる同居人のようなものであり,Xと婚姻する意思は有していない旨等の説明をした。Y2は,Y1からのXについての説明の内容や,同居しているXのためではなく,専ら猫の世話をするというXとの約束を果たすために自宅に戻ろうとしているように見受けられたY1の態度等から,XとY1との関係については,単に同居しているにすぎないものとの認識を有し,Y1との間で,互いに好意を抱き合うようになり,私的な交際を始め,同月23日ころには肉体関係を持った。 |
論点 | Y2にXとY1が内縁関係にあったことについて過失があるか。 |
判旨 | 【論点の判断】 本件では、過失があったものと認めることもできない前記のとおり,Y2は,平成21年6月ころからY1との間で私的な交際を始め,同月23日ころにはY1と肉体関係を持ち,以来,Xから電話を受けた同年7月18日までの間,Y1との交際を続けたものの,同日以降はY1との間に距離を置き,Y1がXとの同居関係を解消した同年9月23日以降,Y1と同居するようになったことが認められる。 Xは,XとY1との内縁関係は,被告らの不貞行為により平成22年1月ころ破綻したものであり,Y1との不貞行為の当時,Y2は,XとY1が夫婦同然の関係にあることを十分に知悉しており,また,仮にそうでないとしても,XとY1が長期間同居していることを知っていたことからして,Y2には故意又は過失がある旨主張するが,前記認定説示のとおり,上記内縁関係は平成21年9月23日にY1によって破棄されたものと認められるところ,前記認定の事実経緯によれば,上記内縁関係の継続中にY2がY1との間で肉体関係を含む交際を続けていたのは,同年6月23日ころから同年7月18日までの間であって,同日以降は上記内縁関係が破棄されるまでY1との間に距離を置いており,また,同年6月23日ころから同年7月18日までの間についても,Y2は,Xについて,Y1と長年同居していることは知っていたものの,Y1からの説明等から,Y1とは単なる同居人以上の関係ではないとの認識を有していたことが認められるところであるから,Y2については,実際にはXと内縁関係にあったY1との間で上記交際を行ったことについて,故意があったものと認めることはできず,また,その際にXとY1とが長年同居していることを知っていたとしても,前記認定の諸事情に照らせば,そのことをもって直ちに過失があったものと認めることもできないというべきである。 以上のとおり,Y2が同年6月23日ころから同年7月18日までの間にY1との間で肉体関係を含む交際を行ったことについては,Xに対する不法行為と評価し得るものではなく,また,本件証拠上,Y2のその余の行為について,Xに対する不法行為と評価すべきものを認めることもできない。 |