判例研究
D&O保険の法令違反免責条項の解釈について研究しました。
令和4年8月24日(水)D&O保険の法令違反免責条項の解釈ついて研究しました。
日時 | 令和4年8月24日(水) |
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場所 | 湊総合法律事務所 |
報告者 | 弁護士 野村 奈津子 |
内容 | D&O保険の法令違反免責条項の解釈ついて研究しました。 |
第397回判例・事例研究会
日時:令和4年8月24日
場所:湊総合法律事務所
報告者:弁護士 野村 奈津子
内容:D&O 保険の法令違反免責条項の解釈
【判例】
事件の表示 | 事 件 名 保険金請求控訴事件 裁判年月日 令和2年12月17日 事 件 番 号 東京高等裁判所 令和2年(ネ)第2309号 裁 判 結 果 控訴棄却 |
事件の概要 | ・Y 損害保険会社は a 社との間で、a 社の代表取締役であった A を被保険者とする会社役員損害賠償責任保険(D&O 保険)契約を締結 ・A はその任務懈怠を理由として株主代表訴訟により a 社に対する損害賠償として約 9000 万円の支払いを命じられた ・A に対して弁護士報酬債権を有する弁護士法人 X1 が、債権者代位権に基づき Y 社に対し、D&O 保険に基づく保険金支払請求訴訟(以下「本件訴訟」)を提起。A の破産手続開始決定により Aの破産管財人 X2が本件訴訟を承継。 |
判旨(抜粋) | 「会社法330条により,株式会社と役員との関係は委任に関する規定に従うとされ,民法644条は,委任に係る受任者の注意義務として,受任者は,委任の本旨に従い,善良な管理者の注意をもって,委任事務を処理する義務を負うと定めている(いわゆる善管注意義務)から,取締役が会社に対して負う善管注意義務は,法令上 の義務であると解され,本件免責条項にい「法令」からこれを除外する理由は見当たらない。したがって,本件免責条項にいう「法令に違反すること」には,取締役としての善管注意義務に違反することも含まれると解するのが相当である。」「・・・・・・本件免責条項は,法令に違反することを被保険者が認識しながら(認識していたと判断することができる合理的な理由がある 場合を含む。)行った行為に起因する損害賠償請求について保険者を免責するものであって,被保険者の善管注意義務違反により生じた損害に関して当然に保険者を免責するというものではな い・・・・・・。」「本件免責条項により,被保険者に対する損害賠償請求の原因となった被保険者の行為について,被保険者が善管注意義務に違反することを認識しながら行った場合又は被保険者がそのように認識していたと判断することができる合理的な理由がある場合には,保険者が免責されることになるものと解される。」「Aは,本件無断保証について,代表取締役として,善管注意義務に基づき,その経緯を調査し,関係者の責任を問う措置をとるべきであったのに,b社の利益確保のため,意図的にそのような措置をとらず,その後のb社に対する迂回融資であるc社案件についても,事実を隠ぺいし、監査法人に対しても自ら虚偽の説明を行うなどしたのであり,Aは,これらの自らの行為が善管注意義務に反するものであることを認識していたものと認められ,さらに,これらの行為のために,第三者委員会を設置する必要性が格段に高まり,b社に対する不正な金融支援について調査をする特別調査委員会及び不正な金融支援の関係者に対する損害賠償請求の要否等について諮問するための責任追及委員会を設置することとなったのであるから,a社が上記各委員会に係る費用を支出したことは,Aが善管注意義務に違反することを認識しながら行った行為に起因する損害であると認められる。」 |
以上