内部統制の意義と取組方法
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内部統制の意義と取組方法
1 内部統制の定義と重要性
内部統制とは、企業が事業活動を健全にかつ効率的に運営するための一連の取り組みのことをいいます。
企業にとって内部統制が必要とされる背景には、以下のようないくつかの重要な要因があります
①大規模な不祥事と企業スキャンダル
1980年代から1990年代にかけて、エンロン社やワールドコム社などの大規模な会計不正が発覚しました。これらのスキャンダルは、財務報告の透明性と正確性の欠如がどれほど深刻な結果を招くかを世界に示しました。これにより、内部統制の強化が企業ガバナンスの改善に不可欠であるとの認識が高まりました。
②法規制の強化
上記の不祥事を受けて、2002年にアメリカでサーベンス・オクスリー法(SOX法)が制定されました。この法律は、特に上場企業に対して内部統制の設計と評価の義務を課し、それを監査するための厳格な要件を設けました。これにより、世界中の多くの国々も類似の法規制を導入し、内部統制の国際的な基準が設定されました。
③グローバル化と市場の複雑化
経済のグローバル化と技術の進化は、企業運営の複雑性を増加させ、新たなリスクを生み出しました。国際的な事業展開、複雑な供給網、デジタルデータの増加などにより、企業は内部統制を強化してこれらのリスクを適切に管理する必要があります。
④投資家と市場の信頼
強固な内部統制は、投資家や市場参加者に対して企業が透明性を持ち、責任を果たしていることを示す重要な要素です。内部統制がしっかりしていることは、投資家の信頼を得るために不可欠であり、企業の資金調達能力や株価の安定にも寄与します。
以上のように、内部統制は企業の持続可能な成長と価値創造を支えるための中核的な要素であり、真摯に取り組むことは企業経営上不可欠となっています。
2 内部統制を実現するには
経営者は、内部統制の基本的な計画と方針を明確に定める義務がありますから、以下の項目を会社の方針として定めなければなりません。
① 内部統制の方針・原則、範囲
② 内部統制の構築を行う責任者の任命。全体的な管理体制。
③ 内部統制構築の手順と日程(スケジュール)
④ 内部統制に関わる人員と構成、教育・訓練の方法
内部統制を実現していくためには、企業文化、経営者の姿勢、組織構造、手順やマニュアル、職務権限が明確かどうか、策定した施策が関係者に周知徹底されているかどうかなどに注意をする必要があります。そして、以下のような個別的な問題についても十分に注意を払う必要があります。
①統制環境について
経営理念や行動指針、内部統制を行うに適切な社内環境が整備されているか。
内部統制を行うための環境(ITへの対応など)が適切に構築され、実施されているか。
②リスクの評価と対応
リスクが随時洗い出され、その発生原因などが特定されているか。
③統制活動
業務プロセスに関わることが、標準化され、統一されているか。
責任と権限が明確になっているか。
虚偽記載リスクを、十分低減できているか。
④情報と伝達
リスクの評価と対応、統制活動、監視、ITへの対応などについて、情報がしっかりと伝達され、徹底されているか。
⑤モニタリング(監視)
内部統制の有効性を評価する部門があるか。
有効性の評価、是正、継続的な改善のサイクルが回っているか。
経営レベルで、日常的にモニタリングされているかどうか。
3 内部統制に取組んだ場合の効果
①法令違反による訴訟リスク等の低減
企業は多くの法律や規制の対象となっており、これらを遵守することが必須です。内部統制は、法令遵守を保証するための手段として機能し、違反による罰金や訴訟リスクを避けるのに役立ちます。
②損失回避・経営安定性確保
経営リスク(財務、運用、戦略、法令遵守など)を特定し、評価し、軽減するための効果的な内部統制は不可欠です。これにより、予期せぬ損失を避け、企業の安定性を保つことができます。
③業務の効率化
内部統制は業務プロセスの効率を高めることも目的の一つです。これにより、無駄の削減、プロセスの標準化、資源の最適化が可能となり、コスト削減と生産性の向上に寄与します。
④財務報告の信頼性
内部統制は、財務報告の正確さと信頼性を保証します。これにより投資家、クレジットレーティング機関、その他のステークホルダーに対して正確な財務情報を提供し、企業価値を維持または向上させます。
以上のように内部統制は、企業がリスクを管理し、戦略を効果的に実行し、全体の業績を向上させるための必要な作用であり、企業経営上、極めて重要な意義を有します。
当事務所では、シンプルで効果的な内部統制プログラムの策定と運用をご支援していますので是非ご相談ください。