転倒・転落事故
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転倒・転落事故
患者の転倒・転落事故が発生した場合の裁判例をいくつかご紹介します。
また、転倒・転落事故防止のために必要な方策としてはどんなものが挙げられるでしょうか。
1 裁判例
(1)東京地判平成10・2・24
高齢の入院患者がローレーターを使用しての歩行訓練中に転倒骨折し、歩行機能を喪失した事例。病院の過失を否定。
(2)東京地判平成14・6・28
患者がリハビリしている際に付添い看護師が離れ、その間にイスから転倒し、頭部打撲により死亡した事例。患者の見当識障害から転倒を予見できたとして、転倒防止義務違反を認めている。転倒防止義務の具体例(重量のあるテーブルを設置して前方への転倒を防止する、椅子の後ろに壁を近接させるなどとして後方への転倒を防止する、付添いを中断するときは椅子から立ち上がれないよう身体を固定する、常時付き添う等)を判示している。
(3)東京高判平成15・9・29
多発性脳梗塞の高齢患者がトイレを済ませた後、病室内で転倒死亡した事例。患者が「ひとりで大丈夫」と言っていたものの、判決は、トイレ時の付添い義務を看護師が怠ったとして過失を認めています。ただし8割の過失相殺あり。
2 転倒・転落事故防止のための方策
(1)設備面での事故防止策
ア ベッドサイドにおける転倒・転落事故を未然に防止するため、 ベッド柵のネジを定期的に確認したり、患者がベッドのどちら側から降りるか確認して、降りやすいようにベッド柵の位置を設定したり、ベッドの高さを患者に合わせて調整したりします。
イ 転倒事故につながる要因の除去
段差を除去したり、スロープを設置したりする他に、廊下が水で濡れているようなことがないように清掃を徹底したり、廊下に物を置かないようにして手すりが必ず使えるように配慮したりします。その他に、患者の使用する履き物も、スリッパではなく、転倒防止用の靴を使用するようにすることも転倒事故の防止につながるでしょう。
(2)職員の患者等に対する対応
ア 患者やその家族への事前の注意喚起
病院側で、転倒・転落事故を未然に防止するための体制づくりをしたとしても、完全に転倒・転落事故を予防することが難しい場合には、転倒・転落事故がそれでも起こりうることを患者やその家族に伝えるとともに、転倒・転落事故が起こらないようにするために、患者やその家族に注意してもらう事項や転倒・転落事故が起こりやすい状況等をまとめた書面を事前に交付するなどして、注意を喚起しておく必要があります。
イ 患者の介助の際にできる限り目を離すことがないようにすること
例えば、排泄介助を行う場合、昼夜ともトイレまで誘導することを励行したり、患者の病状を見てポータブルトイレを使用してもらうようにしたりすることが考えられます。
また、患者から目を離さざるをえない場合には、他の職員や介助者に連絡するなどして、不測の事態が起こらないように対処するようにします。
ウ 転倒事故が起こりやすい場所での職員による介助
例えば、検査室等の検査台から降りるときのように、段差のあるところに降りる際には、患者がバランスを崩して転倒することが多いです。
そこで、このように段差のあるところに降りる場面に立ち会う職員は、患者が段差のあるところから降りる際に、注意を促したりするだけでなく、患者を介助するようにして、未然に転倒事故を防止するように努めましょう。
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