安定した経営のための遺留分対策
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安定した経営のための遺留分対策
ご相談
私は、自分の会社を経営しており、2人の子供(長男と長女)がいます。会社については、長男に譲りたいと考えていますが、私の所有する土地の上に会社所有の建物が建っています。また、長男に土地を全部譲りたいと考えていますが、このような遺言は問題ないでしょうか?
回答
遺言がない場合には、原則として、相続財産である土地は長男と長女の共有になりますので、遺言の作成は重要ですが、遺留分に留意する必要があります。
遺留分制度について
例えば、父親が全財産を特定の子供に相続させる内容の遺言書を作成して死亡した場合、遺された配偶者や他の子供は生活が不安定になる可能性があります。
そこで、民法では、配偶者や子供等の一定範囲の法定相続人に対して、一定割合の相続財産が留保されることが定められています。これが遺留分制度であり、相続人の立場に応じて定められた留保分を遺留分といいます。
遺留分が認められているのは、配偶者、子ども、親であり、兄弟姉妹には認められていません。
もし、遺留分を超えた生前贈与や遺言がなされた場合は、遺留分権利者は、受遺者又は受贈者に対して遺留分を侵害している額に相当する金銭の支払を請求することができます(これを「遺留分侵害額請求権」といいます。)。
問題点
上記事例において、相続人が長男と長女だけの場合、長女には、「遺留分算定の基礎となる相続財産の価額」の4分の1の遺留分が認められますので(民法1042条1項2項)、長男に対して、遺言や生前贈与によって侵害された遺留分侵害額に相当する金銭の支払いを請求することができます。
もし、長男が、父親から譲り受けた会社建物のある土地以外にめぼしい財産がない場合には、遺留分侵害額相当の金銭を支払うことが困難となり、当該土地に抵当権を設定して借入金により資金調達を行う、売却して資金調達せざるを得ない状況となり、安定した会社経営ができなくなるおそれがあります。
具体的対策方法
このような事態を避けるための方法のひとつとして、土地を長男に相続させる旨の遺言書を作成し、長女には、事前に家庭裁判所に申立ててもらい、遺留分放棄の許可を貰うという方法があります。ただし、この方法は、長女の協力が得られることが前提になります。
このほか、遺贈や贈与を受けた者が金銭を直ちに準備することができない場合には、裁判所に対して支払期限の猶予を求めることができますので(民法1047条5項)、この申立てを検討する方法も考えられます。
また、仮に長女が父親に対して虐待や重大な侮辱を加えたときや、著しい非行があったような場合には、裁判所に対して長女を推定相続にから排除することを請求するという方法もあります(民法892条)。
具体的な対応方法は、事案により異なってきますので、専門家へのご相談をお勧めします。