定款に規定することにより安定した経営を行う方法
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定款に規定することにより安定した経営を行う方法
経営の安定のための措置として様々な方法があるが、ここでは定款の見直しによる対処を紹介する。
1 取締役(役員)の解任要件を定款で厳格化する
株主総会による取締役の解任決議は、普通決議(議決権を行使できる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した株主の議決権の過半数の賛成)によるのが原則である(会社法341条、309条1項)。しかしこの解任要件は定款で加重することができ、定款変更により経営の安定化を図ることが可能となる。
定款変更の手続は、株主総会における特別決議(議決権を行使することができる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した株主の議決権の3分の2以上の賛成)が必要である(会社466条、309条2項)。
定款の変更例として以下のような規定を設けることが考えられる。
「第○条(取締役の解任)取締役の解任は、株主総会において議決権を行使できる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した株主の3分の2以上の決議をもって行う。 |
2 定款で累積投票制度を排除する
取締役選任決議は、1人の取締役選任が一つの議案となるため、選任決議を議案毎にすると全て多数派の取締役が選任されることになってしまう。累積投票制度とは、このような事態を回避するため、全取締役の選任を一括し、かつ、株主は1株について選任すべき取締役の数と同数の議決権を持ち、その議決権の全てを1人の候補者に投票することも、分散して投票することも認める制度である(会社法342条3項・4項)。そして会社法は、選任された取締役の地位の安定のため、累積投票により選任された取締役を解任するには、株主総会の特別決議を要するとしている(会社309条2項7号)
このように累積投票制度は、少数派株主が会社にその支持する取締役を送り込むことを可能にする為、その分経営が不安定になってしまうこともあり得る。
そこで会社法は定款により、累積投票制度を排除することができることとしており、このような定款変更をすれば、少数派による取締役選任の可能性を少なくすることができる。
3 定款により株主の代理人資格を制限する
会社法は、株主に代理人によって議決権を行使することを認めている(会社310条1項)。そして、定款によっても、この代理人選任権自体を奪うことはできないと解されている。
しかし、代理人資格を制限することは有効である。例えば、下記のように議決権行使の代理人資格を株主に限るといった制限を課すことは可能である。(最二小判昭和)。
複数の株式を有する者が、複数人に代理権を授与して株主総会に出席させると、株主総会が混乱することもあり得るから、代理人資格の制限は経営安定化の為に重要である。
この場合、定款に下記のような規定を設けることが考えられる。
「第○条(議決権の代理行使)
1 株主は、会社の議決権を有する他の株主1名を代理人として、その議決権を行使することができる。 2 株主または代理人は、株主総会ごとに代理権を証明する書面を会社に提出しなければならない。」 |
このような規定が設けられている場合、会社経営者側と対立する株主が、弁護士を代理人として選任したような事例において、株主以外の者ということで議決権行使及び株主総会出席を拒否できるか。
この点、肯定する裁判例もあるが、東京高判平成22年11月24日判決は拒否できると判示しており、実務においても拒否する方針をとる会社が多い。
4 定款により株式の譲渡制限をする
株主が株式を誰に譲渡してもよいとすると、経営にふさわしくない者が経営参加してくるなど安定した経営を阻害する要因となる。そこで、会社法は、定款に規定することにより、全部の株式の内容として、又は種類株式の内容として、株式の譲渡制限を設けることができるものとしている(会社107条2項1号,108条2項4号)。
譲渡制限条項の記載例は次のとおりである。
「第○条(譲渡制限)
当会社の株式を譲渡するには、取締役会の承認を受けなければ。」 |
この場合、定款変更によって発行する全部の株式に譲渡制限を設けるには、議決権を行使できる株主の半数以上、かつ当該株主の議決権の3分の2以上に当たる多数の賛成を要するものとしている。なお、定款で要件を引き上げることもできる(会社法309条3項1号)。
種類株式の発行後に譲渡制限を設ける場合は、定款変更手続に加えて、譲渡制限の定めを設ける種類株式、及びその種類株式を交付される可能性がある取得請求権付株式・取得条項付株式に係る種類株式総会の決議を要する(会社111条2項、324条
3項1号)なお、この場合の反対株主には、株式買取請求権が付与される(会社116条1項2号)。
5 定款に譲渡制限株式の相続人等に対する売渡し請求条項を規定する
株主が死亡し、相続が発生した場合、相続人が経営にふさわしくない者であることもあり得る。そこで、会社法は、譲渡制限株式を相続その他の一般承継により取得した者に対して、会社に当該株式を売り渡すことを請求することができる旨を定款で定めることができるものとしている(会社174条)。
この場合、定款に下記のような規定を設けることが考えられる。
「第○条(相続人等に対する売渡請求)
当会社は、相続その他の一般承継により当会社の株式を取得した者に対し、当該株式を当会社に売り渡すことを請求することができる。」 |
売渡し請求をすると会社は自己株式を取得することになるが自己株式取得については、財源規制があり、自己株式を取得するのと引換えに交付する金銭等の総額は、当該取得がその効力を生じる日における分配可能額を超えてはならないものとされているので注意を要する(会社461条1項5号)。また、自己株式を取得した日の属する事業年度(その事業年度の直前の事業年度が最終事業年度でないときは、その事業年度の直前の事業年度)に係る計算書類において、分配ができなくなるおそれがあるときは、会社は、当該取得をしてはならず、取得した後、分配が出来なくなった場合には、当該取得を行った業務執行者は、会社に対して連帯して分配できなくなった額と当該取得により株主に対して交付した金銭等の帳簿価額の総額のいずれか少ない額を支払う義務を負う(会社465条1項7号)。
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