新型コロナウィルス感染拡大に関する労務の法律問題

新型コロナウィルス感染拡大に関する労務の法律問題

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1 新型コロナウイルス感染拡大の影響に伴う賃金支払義務

(1)緊急事態宣言・緊急事態措置を受け、会社側から健康な従業員に出社しないよう指示する場合

Q1)緊急事態宣言を受け、新型コロナウイルス(COVID-19)に罹患していない健康な従業員を休ませることとした場合は、賃金の支払義務はありますか?

A1)日本政府は令和2年4月に引き続き、同3年1月7日に緊急事態宣言を発出し、現在は10都道府県がその実施区域とされています。これを受けて都府県も緊急事態措置等の方策を講じています(以下では単に「緊急事態宣言」といいます。)。緊急事態宣言の発出前であれば、あくまで企業が自主的に従業員を休業させるものとして、労働基準法第26条に定める「使用者の責に帰すべき事由による休業」に該当し、平均賃金の6割以上の額を休業手当として支払う必要があるという解釈が一般的でした。
緊急事態宣言後は、以下のように場合分けをして検討する必要があります。

(ア)事業継続を求められている業種の場合

事業継続が求められている業種の場合には、上記同様に企業が自主的に従業員を休業させるものとして、平均賃金の6割以上の額を休業手当として支払う必要があると解されます。

(イ)休業要請・営業時間短縮要請(以下では単に「休業要請等」といいます。)を受けている業種の場合

緊急事態宣言に基づき、都道府県知事から休業要請等(特措法45条2項)を受けた業種については、法律に基づく休業要請等であることから、基本的には労働基準法26条に定める「使用者の責に帰すべき事由による休業」には該当せず、休業補償は不要と考えられます。

もっとも、休業要請等はあくまで「要請」であり強制力があるものではないこと、休業要請等に基づき店舗を休業・時間短縮営業をする必要はあるもののリモートワークによる業務実施が可能であるケースも考えられること等から、休業補償を要するか否かについては、当該企業の業種・事業内容、休業する従業員の地位・業務内容、休業する必要性等を踏まえて個別的に判断する必要があるものと考えられます。

(ウ) 上記(ア)及び(イ)に該当しない業種の場合

それでは、事業継続が求められているわけではなく、他方で休業要請も受けていない業種に該当する企業の場合にはどのように考えるべきでしょうか。多くの企業はこちらに該当するのではないかと思われます。
個別事案ごとの検討が必要となりますが、①自主的な休業として賃金の6割以上の休業補償が必要となるケースが多いものの、②使用者の責任があるとは言えず休業手当の支払が不要となるケースも少なからず存在するものと考えます。
休業要請を受けているわけではなく、企業は通常どおり事業継続が可能ですので、従業員を休業させる場合には基本的には企業の自主的な休業指示として休業補償を行うべきと思われます。
もっとも、今回の緊急事態宣言は、感染につながるヒトとヒトとの接触を減らし、もって新型コロナウイルスの全国的かつ急速なまん延を防止しようとするものであり、可能な限り在宅での勤務を要請されています。かかる状況下で、全てのケースで企業に対して休業手当の支払を求めた場合、企業としては従業員を出勤させる方向に動くことになり、これでは緊急事態宣言の趣旨とは逆に感染拡大に寄与する結果となってしまい本末転倒です。
また、企業は従業員に対して安全配慮義務を負っておりますので、安全配慮義務を全うする意味でも、従業員を休業させる必要がある場面は存在するものと思われます。
したがって、(イ)の場合と同様に、休業補償を要するか否かについては、当該企業の業種・事業内容、休業する従業員の地位・業務内容、休業する必要性等を踏まえて個別的に判断する必要があるものと考えます。
なお、この問題については、厚生労働省より「新型コロナウイルスに関するQ&A(企業の方向け)」が公表されていますので、そちらもご確認いただければと思います。
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/dengue_fever_qa_00007.html#Q4-1

(2)従業員の新型コロナウイルス罹患が判明した場合

Q2)従業員が、保健所で検査の結果、自分が新型コロナウイルスに感染していたことがわかったので、会社を休む場合、賃金を支払う必要がありますか?

A2) この場合は、当該従業員本人の労働能力が低下し、職場におけるウイルス感染を惹起する可能性が高く、労務提供ができないと評価できます。そして、この従業員が感染し、労務提供が不能となった原因が、職務や職場と関係ないものであれば、労働基準法26条の「使用者の責に帰すべき事由」にも該当しないものとして、休業補償を支払う必要はないものと考えられます。
もっとも、当該従業員が職務を遂行する際や、職場で業務遂行中に新型コロナウイルスに感染したとか、使用者が感染拡大のために必要な措置を講じていなかった場合には、会社側の帰責性が強いことから、「債権者の責めに帰すべき事由」(民法536条2項)があるものとして全額の賃金支払義務が認められる可能性がありますから注意を要します。
なお、会社側が賃金支払義務を負担しない場合でも、会社員であれば健康保険に入っていると考えられ、健康保険から傷病手当金の受給を受けられる可能性があります。賃金の3分の2程度の補償が受けられると考えられますので、具体的な申請手続などは、加入する保険組合にお問い合わせいただければと思います。

(3)新型コロナウイルスが流行している地域に出張させていた従業員が帰国した際に、当該従業員を自宅待機させる場合

Q3)当社の従業員を新型コロナウイルスが流行している地域に出張させておりましたが、近時、帰国いたしました。当社としては当該従業員をすぐに出社させることは、他の従業員に感染を拡大させることになるので一定期間は自宅待機させるつもりです。自宅待機命令は認められますか?また、当社は、自宅待機中についても当該従業員に対して賃金支払義務を負うのでしょうか?

A3)まず、会社は、雇用契約に基づく使用者の労働者に対する業務命令権により当該従業員に対し、自宅待機を命ずることは可能です。
次に、賃金支払義務についてですが、当該従業員が、新型コロナウイルスが流行する地域に赴任していたのは、会社の業務命令に基づくものですから、「債権者の責めに帰すべき事由」(民法536条2項)があるものとして全額の賃金支払義務、あるいは少なくとも「使用者の責に帰すべき事由」(労働基準法26条)があるものとして平均賃金の6割以上の支払義務が認められるものと解されます。

(4)新型ウイルス対策として、短時間勤務とする場合

Q4)当社は緊急事態宣言により休業要請は受けていない業種に属しますが、自主的に、どうしても出勤が必要な社員については時短勤務とし、通常の8時間勤務ではなく7時間勤務とすることを検討しております。この場合、賃金を8分の7だけを支払うことで良いでしょうか?

A4)労働基準法26条では、使用者の責めに帰すべき事由による休業の場合には、休業期間中の手当てとして平均賃金の6割以上を支払なければならないとされており、1日の一部を休業する場合には、その日について全体として平均賃金の6割以上を支払うものと解されています。質問の事例が他の諸事情を勘案しても労働基準法26条の「使用者の責に帰すべき事由」による休業と解される場合には、賃金の8分の7=87.5%を支払う必要があるものと考えられます。
 

 

2 新型コロナウイルスの影響により整理解雇する場合

Q5)新型コロナウイルスの影響で受注が減り、緊急事態宣言が発出されてますます深刻な事態に立ち至っています。社員をリストラしたいと考えていますが、どのような手順で行えばよいでしょうか?

A5)

(1)整理解雇とは

リストラには、法律上の「整理解雇」が用いられることが一般的です。整理解雇は、普通解雇や懲戒解雇とは異なり、従業員にその理由があるものではなく、会社側の事情に基づく一方的な解雇です。一方的な解雇は従業員の職を奪い、生活基盤を失わせることとなるため、裁判上は厳格な要件のもとでしか認められないのが実情です。仮に何らの検討もせずに従業員を整理解雇した場合、従業員からは解雇無効を理由とする訴訟を提起され、場合によっては解雇が無効になり、さらには多額の賠償金を支払う必要がでてくることもあります。
従業員をリストラする場合、新型コロナウイルスによる業績悪化というやむを得ない理由であったとしても、よく手順を考えて実施することは経営者として必須です。

(2)整理解雇が有効となるための要件(要素)

 整理解雇は「最後の手段」とも呼ばれる雇用調整方法です。整理解雇が有効となるためには、判例上、①人員削減の必要性、②解雇回避努力、③人員選定の合理性、④手続の相当性という4つの要件があります(「要件」ではなく「要素」と考えることもありますが、以下では「要件」として記載しています)。それぞれ解説していきます。

①人員整理の必要性

本当に人員整理をする必要があったのか、その必要性が要件となります。新型コロナウイルスによる整理解雇に関する判例は、本記事執筆時点(令和2年4月11日)では公表されている限り出ていませんが、例えば、どの程度受注が減ったのか、人件費が占める割合はどの程度なのか、企業のキャッシュフローはどの程度悪化しているのか、今後どれほどの期間その状況が続くと見込まれるのか、などの事情は考慮されるものと考えられます。また、新型コロナウイルスの影響を受けた事業主については、政府から雇用調整金を受給できる場合がありますので、それらを検討してもなお人員削減が必要であったか、という視点でも判断されることが考えられます。
訴訟となった場合にはこれらの事情を企業側が立証する必要がでてきますので、可能な限り、財務数値などを元にした客観的なデータを準備しておく必要があります。

②解雇回避努力

上述の通り整理解雇は「最後の手段」とも呼ばれる方法ですので、整理解雇を避ける努力を尽くしたもののこれが避けられなかったことが要件となります。整理解雇に先行して、希望退職者の募集を行っているか、役員報酬は削減したか、従業員の配置転換はできないか検討したか、などが一般的には考慮されます。新型コロナウイルスの影響に関するものでいえば、テレワークの導入や勤務時間短縮などにより業務量の調整を図ることができなかったか、なども考慮要素になると考えられます。
なお、解雇回避努力は全ての類型の従業員を同様に扱うことまでは求めていないため、例えばアルバイトやパート、派遣、非正規雇用社員、採用内定者の内定取り消しなど、正規社員を守るためにやむなくこれらの雇用調整を先行して行うことはあり得る選択肢です。

③解雇者選定の合理性

やむなく整理解雇を行う場合でも、誰を整理解雇の対象とするかは合理的かつ公平に選定する必要があります。例えば、経営者や人事責任者の主観に基づき「あいつは気に食わないからこの機会に辞めさせよう」といった恣意的な選定をしてしまうと、有効な整理解雇として認められない可能性が高くなります。従業員の年齢、勤続年数、勤怠、成績の優良・不良などの業務上の評価、労働者の生活への影響などの評価等、一定の客観的な基準を設け、人員を選定する必要があります。

④解雇手続の相当性

実際に整理解雇を行う場合には手順、手続も重要となります。労働協約がある場合は、整理解雇を行うために労働組合との協議を義務付ける条項を設けている場合も少なくありません。労働協約がない場合であっても、企業には誠意をもって従業員と協議すべき信義則上の義務がありますので、説明会で充実した説明をすることや、整理解雇の対象となる従業員と個別面談を行い、丁寧な説明を心掛ける必要があります。
なお、整理解雇を行う場合であっても、労働基準法20条1項の適用はありますので、30日前の予告、又は30日分以上の平均賃金(いわゆる解雇予告手当)を支払うことが必要です。他方で、退職金を支払う必要があるかどうかは各社の退職金規程の内容によります。

(3)まとめ

 以上のとおり整理解雇の要件は極めて厳格ですので、緊急事態宣言が発出され、ますます経営が厳しくなっているという理由だけで整理解雇を行ってしまうと、後にさらに深刻なトラブルに陥ることになる可能性があります。整理解雇を行う場合には、上述のような手続きを履践しつつ行う必要がありますので、弁護士に相談しつつ進めて行くことを強くお勧めいたします。
 

 

3 新型コロナウイルスの影響による内定取消

Q6)当社では、昨年秋に学生数名に対し、内定通知を出しておりました。しかし、新型コロナウイルスの感染拡大により、当社の売上は激減し、新卒の学生を採用しているどころではなくなりました。そこで当社では、3月末ころに、この学生らに対し、内定を取り消す旨の通知を致しました。そうしたところ、当該学生らから、内定取消は無効であるとして、就労させるよう求められております。当社はこの要求に応じなければならないのでしょうか?

A6)
この問題については、まず内定も純然たる労働契約であることを理解する必要があります。労働契約とは、「労働者が使用者に使用されて労働し、使用者がこれに対して賃金を支払うことを内容とする労働者と使用者の間の契約」です。
そして、学生が、内定通知を受領することにより労働契約が成立しますが、実際に就労するのは卒業後の4月からということで、「始期付き」の労働契約ということになります。
また、成績不良による卒業延期、健康状態の著しい悪化、経歴詐称などの重大な虚偽申告など、やむを得ない場合には内定を取り消すことができる旨が内定通知に記載されることが多く、この場合には、内定を取り消す権利が会社側に留保されることになるので、「解約権留保付き」の労働契約ということになります。
以上の意味で、内定の法的性質は、「始期付解約権留保付労働契約」ということになります。

このように内定は労働契約そのものですから、内定取消しは労働契約の解約に該当することになります。
労働契約法16条は「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする」と規定しており、当該規定は内定取消しにも適用されますから、客観的合理性と社会的相当性の2つの要件を充足しなければ内定取消は無効ということになります。
この点に関し、最高裁昭和54年7月20日大日本印刷事件判決は、内定取消が許容できる場合について、「採用内定当時知ることができず、また知ることが期待できないような事実であって、これを理由として採用内定を取消すことが解約権留保の趣旨、目的に照らして客観的に合理的と認められ、社会通念上相当として是認することができるものに限られる」と判示しています。

それでは、新型コロナウイルス感染拡大の影響により企業業績が著しく悪化したことを理由に内定取消をすることが法的に認められるでしょうか?

まず、企業業績の悪化という事情は、内定を受けた学生側にはまったく帰責性のない事情です。それにも関わらず労働契約を取り消すという場合には相当に厳格な要件が課されることになります。判例は、内定取消を整理解雇(経営不振や事業縮小など、使用者側の事情による人員削減のための解雇)と同様に解し、上述した「整理解雇の4要件」を充足する場合にのみ内定取消が認められるとしています。
新型コロナウイルスの影響により企業業績に深刻な影響を与えているとしても、これら4つの要件を満たすことは非常に困難ですから、すぐに内定取消通知を学生に出すことはしてはいけません。内定取消しを回避するためにどのような努力をしたのか、内定取消しの対象とされる学生選定が合理的と言えるか、内定取消手続が妥当と評価できるか、等々を慎重に検討していく必要があります。
政府は、新型コロナウイルスの影響で内定取消が行われていることを憂慮して、令和2年3月13日に「新型コロナウイルス感染症への対応を踏まえた2020年度卒業・修了予定者等の就職・採用活動及び2019年度卒業・修了予定等の内定者への特段の配慮に関する要請について」を日本経済団体連合会、経済同友会、日本商工会議所等に通知しました。
そこには、2019年度卒業・修了予定等の内定者について、① 採用内定の取消しを防止するため、最大限の経営努力を行う等あらゆる手段を講じること、② やむを得ない事情により採用内定の取消し又は採用・入職時期の延期を行う場合には、対象者の就職先の確保について最大限の努力を行うとともに、対象者からの補償等の要求には誠意を持って対応すること等が規定されていますから注意して下さい。

いずれにしましても、一旦、内定取消通知を出してしまって、学生側から内定取消無効を争われると、企業側としては非常に困難な対応を強いられることになりますので、弁護士と十分に協議して慎重に対応するようにして下さい。
 

 

4 在宅勤務などのテレワークの導入

(1)就業規則の定め

Q7)当社では、新型コロナウイルスに対応するため、従業員に在宅勤務などのテレワークを実施したいと考えております。就業規則に在宅勤務に関する定めがないのですが、現在、定めている余裕がありません。従業員に在宅勤務をしてもらうことは可能でしょうか?

A7)テレワークとは、在宅勤務(労働者の自宅で勤務する)やモバイル勤務(ノートPCやタブレット等を利用して様々な場所で勤務する)、サテライトオフィス勤務(自宅近くや通勤途中の場所などメインのオフィス以外の場所で勤務する)など、情報通信技術を活用して、場所や時間にとらわれない柔軟な働き方のことを言います。
 このようなテレワークは、原則として就業規則に定めがないと命ずることはできませんが、新型コロナウイルスの感染防止を目的として、一時的措置として実施するのであれば、当該労働者の合意を得て、テレワークを実施することは可能であると考えられます。

(2)テレワークの際の労働基準法令その他の留意点

Q8)新型コロナウイルス感染防止のため、従業員に在宅勤務その他のテレワークを行ってもらう場合、会社としてはどのようなことに留意する必要がありますか?

A8)テレワークを行う労働者にも、労働基準法、最低賃金法、労働安全衛生法、労働者災害補償保険法等の労働基準関係法令が適用されることは言うまでもありません。ただし、労働者が通常の勤務と異なる環境で就業することになりますので、労働時間の管理などさまざまな事項についてご留意いただく必要があります。
 テレワークを行う際の留意事項については、平成30年2月22日に、厚生労働省が、「情報通信技術を利用した事業場外勤務の適切な導入及び実施のためのガイドライン」を定めており、大変よくまとめられており参考になります。ぜひよく読んでご対応ください。
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/shigoto/guideline.html
 
 

新型コロナウィルスの感染拡大に伴う雇用調整等-企業が取り得る手段

No. 採りうる手段 説明 メリット デメリット 給与等の補償 コメント
1 在宅勤務命令 従業員に在宅での勤務を命令する方法 ・業務と雇用は維持しつつ、新型コロナウィルスの感染拡大を防止することができる ・効率が低下する業務、在宅ではなしえない業務が存在する場合がある
・従業員の残業時間管理を徹底できないおそれがある
通常どおりの給与を支払う必要 在宅勤務が可能な業務については、在宅勤務命令を実施することを推奨致します。
2 短時間勤務命令 従業員の労働時間を、短縮する方法(時差出勤などに対応) ・業務と雇用は維持しつつ、新型コロナウィルスの感染拡大を防止することができる ・右記の通り、通常どおりの給与を支払う必要あある 使用者の自主的な判断で労働時間を短縮することとなるため、給与の全額支払いが必要(民法536条2項) 短時間勤務への切替が必要な場合、給与は全額支払う必要がありますのでご留意ください。
3 出勤停止命令 会社が従業員に、出勤停止を命令する方法 ・雇用を維持しつつ、新型コロナウィルス感染拡大を防止することができる
・雇用調整助成金を受領できる場合がある
・業務が停滞することに加え、給与補償等が必要となる場合がある(右記参照) ①事業が継続可能であるにもかかわらず使用者の自主的な判断で休業するという評価になる場合
→給与の全額支払いが必要(民法536条2項)
②労働者に対する安全配慮義務の履行として、または感染拡大の防止のため、休業の判断をすることは合理的であると判断される場合
→給与の6割の支払いで足りる(労基法26条)
③政府が非常事態宣言を発し、首都圏を封鎖するいわゆるロックダウン状況になり、従業員に働いてもらうことができないと判断される場合
→給与の支払いが不要※雇用調整助成金を受領できる場合がある
左記いずれに該当するかは個別具体的な事情により判断され一義的に明らかではないため、後日紛争になる可能性はあります。
4 派遣契約、業務委託契約の解除 派遣契約、業務委託契約を解除する方法 ・従業員の雇用を継続することができる
・契約内容によっては、契約解除に伴い違約金等の支払いが不要
・契約解除条項に該当するか個別の判断を要する
・契約内容によっては、契約解除に伴い違約金等の支払いが必要となる可能性がある
従業員ではないため、契約解除後の給与補償等は不要 業務内容・契約内容を吟味し、解除が可能な契約については解除を検討することを推奨致します。
5 退職勧奨 特定の従業員に対し、直接退職を持ちかける方法 ・従業員と個別に退職合意を得るため、後日紛争となる可能性が低い
・従業員全体ではなく、特定の従業員に働きかけが可能
・あくまで任意の交渉であり、強制をすることはできない(執拗な退職勧奨は、それ自体が不法行為を構成する場合がある)
・退職金の上乗せ、会社都合での離職票作成等が必要となる場合がある
合意退職となるため、退職日以降の給与補償等は不要 従業員数を削減しなければ会社の営業に支障が生じる場合に、整理解雇の前段階として実施することを推奨致します。
6 早期退職者の募集 全従業員に対し、早期退職者を募る方法 ・従業員と個別に退職合意を得るため、後日紛争となる可能性が低い
・従業員全体で不公平感がなく、従業員から不満が出にくい
・整理解雇をする前段階で早期退職者を募集することで、整理解雇が有効になりやすくなる(他の手段も実施したことを立証できる)
・退職してほしくない従業員が早期退職に応募した場合、退職を認めざるを得ない
・退職金の上乗せ、会社都合での離職票作成等が必要となる場合がある
合意退職となるため、退職日以降の給与補償等は不要 従業員数を削減しなければ会社の営業に支障が生じる場合に、整理解雇の前段階として実施することを推奨致します。
7 普通解雇 就業規則の規定に基づき、従業員を解雇する方法 ・就業規則の解雇事由に該当していれば、所定の手続を経ることで通常解雇が可能 ・新型コロナウィルスを理由とする解雇は通常就業規則に規定がないため、無理に普通解雇を行うと解雇無効を主張される可能性がある
・30日前の解雇予告、又は解雇予告手当(30日分の平均賃金)の支払いが必要
・解雇が有効であれば、解雇予告手当等の支払いのみで、その後の給与等は発生しない
・解雇が無効であることが裁判等で確定すると、それまでの賃金等を支払う必要が出てくる
解雇無効となる場合の支出が多額になる可能性があり、また訴訟対応等が必要となるため推奨致しません。
8 整理解雇 特定の従業員を強制的に解雇する方法(いわゆる「リストラ」) ・特定の従業員を解雇させることが可能
・退職金を規程以上に上乗せする必要はない
・整理解雇には判例上、厳格な要件がある(①人員削減の必要性、②解雇回避努力、③人員選定の合理性、④手続の相当性)
・30日前の解雇予告、又は解雇予告手当(30日分の平均賃金)の支払いが必要
・解雇が有効であれば、解雇予告手当等の支払いのみで、その後の給与等は発生しない
・解雇が無効であることが裁判等で確定すると、それまでの賃金等を支払う必要が出てきる
整理解雇は「最後の手段」と呼ばれる方法です。他の手段を尽くしても、従業員を整理解雇しなければ会社の存続が厳しくなってきた際に行うことを推奨致します。
9 内定者の自宅待機 採用内定者の就業開始日を遅らせる(一定期間休業させる)方法 ・従事すべき業務が無いにもかかわらず給与等を全額支払うことを回避することができる
・今後の状況に柔軟に対応すべく、採用内定は維持することができる
・右記の通り、休業補償が必要となる場合がある ・当該休業が使用者の責めに帰すべき事由によるものであれば、使用者は、労働基準法第26条により、休業期間中の休業手当(平均賃金の100分の60以上)を支払わなければならない
(使用者の責めに帰すべき事由か否かの判断はNo.3参照)
内定取消しよりも柔軟な対応であるため、まずは内定者の自宅待機を検討し、それでも業務の継続が難しい状況である場合には内定取消しをご検討ください。
10 内定取消し 採用内定者の内定を取り消す方法 ・新規労働者の受け入れを拒むこととなるため人件費削減に繋がる ・採用内定の取り消しは解雇とほぼ同様に内定者保護が図られている。具体的には、採用内定取り消しが客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は判例上無効となる。
・採用内定取り消しをする場合、ハローワークへの連絡等が必要となる
・内定取消し有効であれば、給与等は発生しない
・内定取消しが無効であることが裁判等で確定すると、それまでの賃金等を支払う必要が出てきる
内定者が従業員に近い立場で保護されるとはいえ、従業員よりは優先順位は低くなります。従業員の解雇をする前段階で、内定者の内定取消しをすること自体は現実的な選択と言えますが、内定者への説明の有無など内定取消し時の経緯や対応も有効性を判断するうえでの要素となっておりますので、内定取消しを行う際には事前にご相談ください。

 

 

 
 

<本Q&Aご利用上のご注意>

本Q&Aは、あくまでも弊所の弁護士による一つの見解を示したに過ぎず、事案によって結論は異なってくる可能性があります。本Q&Aに基づいて行動した結果、損害が発生したとしても一切賠償等には応じかねます。必ず、事前に弁護士に相談して、当該弁護士のアドバイスに従って対応するようにして下さい。

 

 

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