景品表示法の改正について

景品表示法の改正について

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景品表示法の改正について

第1 課徴金制度の導入(平成28年改正)

商品やサービスの不当な表示について、より実効的な規制を行うため、平成28年4月1日から改正景品表示法が施行され、課徴金制度が導入されています。

課徴金制度の概要

景品表示法の表示規制に関する違反行為については、課徴金制度が導入されています。
対象行為は、有利誤認表示(5条1項1号)および優良誤認表示(5条1項2号)で(「その他誤認されるおそれのある表示」(5条1項3号)は対象となりません。)、課徴金額は、対象商品・役務の売上額(最大3年間)の3%です。

ただし、上記の基準により算定した課徴金額が150万円以上 (課徴金対象行為に係る商品または役務の売上額が5000万円以上)の場合に限られます。課徴金対象行為をした場合であっても、自らが行った表示が有利誤認表示または優良誤認表示に該当することを知らず、かつ、知らないことにつき相当の注意を怠った者でないと認められるときも、課徴金の納付を免れます。

なお、一般消費者の被害回復促進の観点から、事業者が所定の手続きに沿って返金措置を実施した場合に課徴金を免れたり減額される制度も定められています。

課徴金納付命令が下された場合には、対象商品・役務の売上の全体に占める割合によっては、それ自体が企業にとって大きなダメージとなります。そればかりでなく、課徴金を課されたことによる企業イメージの低下とそれによる損害は計り知ることはできません。

課徴金制度
【対象行為】 優良誤認表示、有利誤認表示
【課徴金額】 対象商品・役務の売上額の3%
【対象期間】 3年間を上限
【主観的要素】違反事業者が相当の注意を怠った者ではないと認められるときは、課徴金を賦課しない
【規模基準】 課徴金額が150万円未満となる場合は、課徴金を賦課しない

課徴金制度の詳細についてお知りになりたい場合は、当事務所までご相談ください。

第2 ステルスマーケティング規制の導入等(令和5年改正)

事業者の自主的な取組の促進、違反行為に対する抑止力の強化等を講じることで、一般消費者の利益の一層の保護を図ることを目的として、改正景品表示法が令和5年5月10日に成立しました。

この景品表示法の令和5年改正のうち、ステルスマーケティング規制は令和5年10月1日から施行され、事業者の自主的な取組の促進に関するもの、違反行為に対する抑止力の強化に関するもの、および円滑な法執行の実現に向けた各規定の整備に関するものは令和6年10月1日から施行されています。

 1 ステルスマーケティング規制

ステルスマーケティングとは、実際には事業者による広告であるにもかかわらず、それを表示せずに行われる広告・宣伝のこといい、①インフルエンサーが事業者から金銭などの利益の提供を受け、その事業者の商品やサービスに関して宣伝・広告を行う「利益提供秘匿型」と、②実質的に事業者が行っている広告・宣伝であるにもかかわらずそれを隠し、表面上は第三者によるものと誤認させる「なりすまし型」があります。

これまで欧米ではステルスマーケティング規制が法制化されていましたが、日本では規制の対象外となっていました。しかし、令和5年10月1日に施行された改正景品表示法によりステルスマーケティングが「不当表示」に指定されることになりましたので、日本でもステルスマーケティングが規制の対象となりました。

①事業者が自己の供給する商品または役務の取引について行う表示であって(事業者の表示であること)、②一般消費者が当該表示であることを判別することが困難であると認められるもの(一般消費者が事業者の表示であることを分からないこと)が「不当表示」となります。

⑴ 事業者の表示であること

事業者の表示とは、顧客を誘引するための手段として、事業者が自己の供給する商品・サービスの品質、企画、その他の内容や価格等の取引条件について行う表示のことであり、一般消費者に対して、広告・宣伝など商品・サービスを知らせる表示全般のことをいいます。

事業者の表示と判断されるのは、事業者がその表示内容の決定に関与したと認められる場合で、客観的な状況に基づき、第三者の自主的な意思による表示内容と認められない場合です。つまり、客観的な状況に基づき、第三者の自主的な意思による表示内容と認められる場合は、規制の対象外となります。

⑵ 一般消費者が事業者の表示であると分からないこと

一般消費者が表示を見て、事業者の表示であることが明瞭となっているかどうかを表示内容全体から判断します。そのため、事業者が自己の供給する商品または役務の取引について広告・宣伝をする場合には、広告・宣伝内において事業者が行っているものである旨を表示することが必要となります。

表示内容全体から判断するとは、表示上の特定の文章、図表、写真などから一般消費者が受ける印象・認識ではなく、表示内容全体から一般消費者が受ける印象・認識が基準となることですので、コンテンツ内において事業者が行っている広告・宣伝である旨の表示をする場合でも、フォントが小さい、動画内でのテロップが短時間などの場合には、一般消費者が表示を見て、事業者の表示であることが不明瞭ということができるため、規制の対象となりますので、注意が必要となります。

⑶ 違反した場合

ステルスマーケティング規制に違反した場合は、事業者に対して、措置命令が行われ、措置命令についてはその内容が公表されます。そして、措置命令に従わない場合には、2年以下の懲役または300万円以下の罰金のいずれかまたは両方が科せられることになります。

なお、表示内容に優良誤認または有利誤認がある場合には、ステルスマーケティング規制違反に加えて、優良誤認または有利誤認の違反に関する法的措置も受けることになりますので、注意が必要です。

 2 事業者の自主的な取組の促進に関するもの

⑴ 確約手続の導入

優良誤認表示等の疑いのある表示等をした事業者が是正措置計画を申請し、内閣総理大臣から認定を受けたときは、当該行為について、措置命令および課徴金納付命令の適用を受けないこととする制度が創設されました(26条~33条)。この確約手続により、迅速に問題が改善されることが期待されます。 

⑵ 課徴金制度における返金措置の弾力化

特定の消費者へ一定の返金を行った場合に課徴金額から当該金額が減額される返金措置に関して、返金方法として金銭による返金に加えて第三者型前払式支払手段(電子マネー等)も認められるようになりました(10条)。

 3 違反行為に対する抑止力の強化に関するもの

⑴ 課徴金制度の見直し

課徴金の計算の基礎となるべき事実を把握することができない期間における売上額を推計することができる規定の整備がなされるとともに(26条~33条)、違反行為から遡り10年以内に課徴金納付命令を受けたことがある事業者に対し、課徴金の額を1.5倍に加算する規定が新設されました(8条5項・6項)。

⑵ 罰則規定の拡充

優良誤認表示・有利誤認表示に対して、直罰規定が新設され、100万円以下の罰金が科せられます(48条)。

 4 円滑な法執行の実現に向けた各規定の整備に関するもの

⑴ 適格消費者団体による開示要請規定の導入

適格消費者団体が、一定の場合に、事業者に対し、当該事業者による表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の開示を要請することができるとともに、事業者は当該要請に応じる努力義務を負う旨の規定が新設されました(35条)。

⑵ 国際化の進展への対応

外国当局との間における情報提供に関する規定が新設され(41条)、外国当局が職務を遂行するのに資すると認定した情報に関して、内閣総理大臣は、外国当局に対して情報提供を行うことが可能となります。また、措置命令等における送達制度が整備されました(42条~45条)。

令和6年10月1日から施行されている令和5年改正景品表示法において、一定期間内に違反行為を繰り返した場合の課徴金額が増額され、優良誤認表示・有利誤認表示に対する直罰規定が新設されているため、違反行為に対する規制が強化されています。

事業者においては、これまで以上に広告・宣伝等における表現が景品表示法に違反していないか慎重に検討する必要があります。他方、確約手続が導入されたことにより、景品表示法に違反しているまたは違反していると疑われる場合であっても、是正等適切な対応を行うことにより、措置命令や課徴金納付命令を回避することができるようになりますので、違反した場合の対応について、事前に検討しておくことも重要となります。

景品表示に違反するか否かやどのような是正措置を講じることで措置命令や課徴金納付命令を回避することができるかについては難しい判断を伴うことが多いです。専門家の意見をふまえて適切に判断することが重要ですので、お気軽に当事務所にご相談ください。

 

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