苦情を法律問題にさせない
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苦情を法律問題にさせない
エステティック、語学教室、家庭教師、学習塾などの特定継続的役務提供の場合を前提に、苦情を特商法上の法的紛争に発展させないための注意点は、次の通りです。
1.まずは苦情を少なくすること
お客様からの苦情の多くは、
「契約時に受けた説明と実際のサービス内容が異なり、サービスの質が悪い。」
「自分に効果が上がらないのはサービスの質が悪いからである。」
「中途解約の返金が少ない。」
というものです。
お客様との話し合いがうまく進まない場合、サービス内容に対する苦情・クレームが、
① クーリング・オフによる入会金等の全額返還
② 中途解約による返金
③ 不実告知または事実不告知による取消
といった、特商法上の法的紛争に発展することがあります。
そこで、サービスや契約の内容について事前に十分に説明するなどし、まずは苦情の発生件数を少なくするということが重要となります。
また、発生した苦情が特商法上の法的紛争に発展することを防ぐために、以下のように事前に準備しておくことも重要となります。
2.法定書面の整備・確実な交付をすること
お客様がクーリング・オフ期間を過ぎてからクーリング・オフを主張する場合、法定書面(概要書面・契約書面)の不備を指摘して、法定書面不交付によるクーリング・オフ期間未経過を理由とすることがほとんどです。
概要書面と契約書面は「明確さ」を第一に、必要的記載事項を網羅した書面を、その事業者の役務の特徴を理解した弁護士とともに慎重に作成すべきです。
また、法定書面の交付を確実に行うため、従業員に対する教育を徹底し、紛争に備えて記録化を励行することも重要です。
3.中途解約時の紛争防止のため、支払方法の工夫や中途解約時の清算方法を明確化しておくこと
中途解約に関する事項は概要書面・契約書面の記載事項となっており、中途解約時の清算方法が不明確な場合には、お客様とのトラブルに発展するだけではなく、特商法上のクーリング・オフの問題ともなり得ますので、法定書面作成段階で注意が必要です。
また、中途解約時には、特定継続的役務提供契約は将来に向かって効力を失うことになり、事業者は、既に提供された役務についての対価に相当する額を正当に受領できますが、既に提供された役務をどのように評価するのかは極めて難しい問題ですので、例えば、月謝制度にすることにより、中途解約時の対価の精算に関する問題の発生を防止する工夫をすることも考えられます。
4.不実の告知または事実不告知による取消をされないために、従業員に対する教育、および説明内容の証拠化をすること
お客様からの、契約時に告げられた事実と実際が違う、との苦情は、不実告知または事実不告知による取消の主張に発展する可能性があります。
そこで、契約時には正確かつ十分に説明を行うとともに、説明した内容を必ず記録化し、言った言わないの紛争を防止することが必要となります。
従業員に対する教育において、不実告知等は契約の取消事由となることをきちんと理解させることが重要ですので、弁護士に実際の勧誘方法を見てもらいチェックを受けることもお勧めです。