判例研究
請負工事における、仕事の未完成と瑕疵の分水嶺について研究しました。
令和3年1月27日(水)に請負工事における、仕事の未完成と瑕疵の分水嶺について研究しました。
日時 | 令和3年1月27日(水) |
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場所 | 湊総合法律事務所 第1会議室 |
報告者 | 弁護士 石田 嘉奈子 |
内容 | 請負工事における、仕事の未完成と瑕疵の分水嶺について |
第369回 判例・事例研究会
日時 令和3年1月27日
場所 湊総合法律事務所
報告者 弁護士 石田 嘉奈子
事件の表示 | 事 件 名 請負代金請求事件 判 決 昭和 36 年 12 月 20 日/東京高裁/判決/昭34 (ネ)2336号 |
事案の概要 | ⚫ 請負人が病院の増改築工事に関して請負残代金の支払いを求めた事案。 ⚫ しかし、発注者から仕事が未完成であるから、請負代金の支払が拒否されている。 |
論点 | 請負工事の未完成に該当するか仕事の目的物のかしに該当するかの判断。 |
判旨 | 【論点の判断】 ⚫ 工事が途中で廃せられ予定された最後の工程を終えない場合は工事の未完成に当るものでそれ自体は仕事の目的物のかしには該当せず、工事が予定された最後の工程まで一応終了し、ただそれが不完全なため補修を加えなければ完全なものとはならないという場合には仕事は完成したが仕事の目的物にかしがあるときに該当するものと解すべきである。 【理由】 ⚫ 民法が、一方第六百三十二条第六百三十三条において、仕事が完成し目的物を引渡したときは報酬の支払をなすことを要するものとし、他方第六百三十四条第二項において、請負人が仕事の目的物のかしにつきその担保責任を果たすまでは注文者は報酬の支払につき同時履行の抗弁権を有するものとして、仕事の目的物にかしがあつても一応報酬が請求できることを前提としているところから見れば、民法は、同じく仕事の結果が不完全な場合のうち、仕事の目的物にかしがある場合と、仕事が完成しない場合とを区別し、たとえ仕事の目的物にかしがあつても、それが隠れたものであると顕われたものであるとを問わず、そのために仕事が完成しないものとはしない趣旨であると解すべきである。 ⚫ すなわち請負人は、仕事が完成して目的物を引渡し又は引渡を要しない仕事の場合において仕事が終了したときは、別段の特約がない限り、直ちに報酬の支払を請求することができ、仕事の目的物にかしがあると否とを問わないと同時に、仕事の目的物にかしがあるときは、注文者には、かしの修補を請求し又はこれと併わせて損害賠償の請求をなし、請負人がその義務を履行するまでは報酬金の支払を拒否する同時履行の抗弁をなす権利が与えられている。従つて注文者は仕事が完成して目的物の引渡があつたとき又は目的物の引渡を要しない場合において仕事が終了したときは、この請負人の担保責任を追及する方法によらないで、単に仕事の目的物にかしがあるというだけの理由で直ちに報酬金の支払を拒むことはできないものというべきである。 【本件へのあてはめ(※報告者により、一部抜粋)】 ⚫ 一階洋間(応接室)のマントルピースの上の飾板の塗装について ⚫ 上記飾板の塗装がしてないのは、請負人の主張するように一旦完成したものを発注者の指示により塗直すため剥がしたのではなく、請負人の派遣した塗装職人が一旦黒の塗装をして見たけれどもその結果が満足すべきものでなく、それを発注者にも指摘されたので塗り直すため板を削つたままその後仕事を放棄して塗装をなすに至らなかつたものであることを認めることができるので、この場合はなお工事が完成しないものというを妨げ ない。 |