判例研究
通則法12条2項の推定が覆された事例について研究しました。
令和4年1月12日(水)通則法12条2項の推定が覆された事例について研究しました。
日時 | 令和4年1月12日(水) | |
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場所 | 湊総合法律事務所 | |
報告者 | 弁護士 野村 奈津子 | |
内容 | 通則法12条2項の推定が覆された事例について研究しました |
第389回 判例・事例研究会
日時 令和4年1月12日
場所 湊総合法律事務所 第一会議室
報告書 弁護士 野村 奈津子
【判例】
事件の表示 | 事 件 名
雇用関係不存在確認等請求本訴、同反訴、 事 件 番 号 平成30年(ネ)第1964号 決 定 東京高等裁判所判決 |
事件の概要 | X(日本法人。原告兼反訴被告・被控訴人兼附帯控訴人)がY(日本国籍。被告兼反訴原告・控訴人兼附帯被控訴人)に対し、両者間の有期労働契約が期間満了により終了した として、労働契約上の義務を負担しないことの確認等を求め(本訴)、YがXに対して、労働契約上の権利を有する地位にあること等を求めた(反訴)事案原審(さいたま地判平成30・3・23)が、本訴請求の一部を認容、その余の請求を却下または棄却したため、Yが控訴を、Xが附帯控訴を提起した。 |
判旨(準拠法の点についての抜粋) | Yの控訴・追加請求をいずれも棄却。Xの附帯控訴のうち一部認容、その余は棄却。 「(ア)・・・本件労働契約は、我が国において締結されたものであり・・・、Yの勤務条件はXの規程に従うと定めているところ・・・、任期制職員就業規定は、この規程に定めのない事項については、労基法その他の法令の定めるところによ る旨定めている・・こと、X及びYは、本件労働契約に係る勤務地について C 事務所に変更する予定であったのに、本件労働契約締結時及び変更時のいずれにおいても、勤務地の変更に伴い、本件労働契約を規律する法律を変更するか 否かについて別段の合意をしていなかったこと・・・が認められる。 そうすると、X及びYは、本件労働契約締結当時、本件労働契約が日本法により規律されるとの意思を有していたものと認められるから、本件労働契約の効力についての基準法として、日本法を選択したと認められる。」 「(イ)もっとも、通則法は、労働契約の効力について通則法7条の規定による選択により適用すべき法が当該労働契約に最密接関係地法以外の法である場合であっても、労働者が当該労働契約に最密接関係地の法中の特定の強行規定 を適用すべき旨の意思表示を使用者に対し表示したときは、当該労働契約の効力に関しその強行規定の定める事項については、その強行法規をも適用すると定める(12条1項)。そして、かかる規定の適用に当たっては、当該労働契約における労務提供地法・・・が当該労働契約の最密接関係地法と推定される(同条2項)。XとYは、平成22年9月1日、勤務地をD本所として本件労働契約を締結したが、 同年10月1日、本件労働契約を変更して勤務地をC事務所としたこと・・・、Yは同日以降、主にC事務所において労務を提供していたこと・・・が認められるから、Yの労務提供地は、中国であるといえる。そうすると、通則法12条2項により、本件労働契約について、中国法が最密接関係地法であると推定される。しかし、・・・Xは、法律上、職員の給与等の支給の基準を定める権限が与えられていること、・・・Xは、その権限の行使を含む職員の労働条件の決定・管理等の事務を、埼玉県市所D在の本部(主たる事務所)で遂行しており、本件労働契約に関する事務についても同様であり、C事務所では行っていないこと、その他、前記(ア)に示した諸事情とも併せると、本件労働契約についての最密接関係地が中国であるとの推定は覆され、日本であると認められる。」 |