ハッシュタグの使用と商標権侵害について研究しました。

判例研究

ハッシュタグの使用と商標権侵害について研究しました。

令和5年6月14日(水)ハッシュタグの使用と商標権侵害について研究しました。

日時 令和5年6月14日(水)
場所 湊総合法律事務所
報告者 弁護士 沖 陽介
内容 ハッシュタグの使用と商標権侵害について研究しました。

第405回 判例・事例研究会

日時 令和5年6月14日

場所 湊総合法律事務所

報告者  弁護士 沖 陽介

事件 大阪地方裁判所令和3年9月27日(令和2年(ワ)第8061号)
事案の概要 アパレル製品等の企画・デザイン・製造・販売等を業とするX社は、「かばん類、袋物」を指定商品(第18類)とする登録商標「シャルマントサック」(標準文字。以下「本件商標」という。)の商標について商標権を有している。
Yは、オンラインフリーマーケット(メルカリ)上に解説したサイト(Yサイト)において、巾着型バックを含む商品を販売していた。ここでYは、商品紹介ページにハッシュタグ「#シャルマントサック」(被告標章1)との表示を行った。Xは、Y標章はXの本件商標の商標権を侵害するとして「#シャルマントサック」及び「シャルマントサック」の標章の使用の差止めを請求した。
判旨(一部抜粋) 1 商標の「使用」といえるか
被告サイトは,そこで被告商品を含む商品が表示され,販売されていることに鑑みると,被告の商品に関する広告を内容とする情報を電磁的方法により提供するものといえる。したがって,このような被告サイトに被告標章1を表示することは,商標の「使用」に当たる(法2条3項8号)。
2 「商標的使用」といえるか(出所識別標識及び自他商品識別標識の有無。需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができる態様による使用といえるか。)
前記のとおり,オンラインフリーマーケットサービスであるメルカリにおける具体的な取引状況をも考慮すると,記号部分「#」は,商品等に係る情報の検索の便に供する目的で,当該記号に引き続く文字列等に関する情報の所在場所であることを示す記号として理解される。このため,被告サイトにおける被告標章1の表示行為は,メルカリ利用者がメルカリに出品される商品等の中から「シャルマントサック」なる商品名ないしブランド名の商品等に係る情報を検索する便に供することにより,被告サイトへ当該利用者を誘導し,当該サイトに掲載された商品等の販売を促進する目的で行われるものといえる。このことは,メルカリにおけるハッシュタグの利用につき,「より広範囲なメルカリユーザーへ検索ヒットさせることができる」,「ハッシュタグ機能をメルカリ上で使うと使わないでは,商品閲覧数や売り上げに大きく差が出ます」などとされていること(いずれも甲7)からもうかがわれる。
また,被告サイトにおける被告標章1の表示は,メルカリ利用者が検索等を通じて被告サイトの閲覧に至った段階で,当該利用者に認識されるものである。そうすると,当該利用者にとって,被告標章1の表示は,それが表示される被告サイト中に「シャルマントサック」なる商品名ないしブランド名の商品等に関する情報が所在することを認識することとなる。これには,「被告サイトに掲載されている商品が「シャルマントサック」なる商品名又はブランド名のものである」との認識も当然に含まれ得る。
他方,被告サイトにおいては,掲載商品がハンドメイド品であることが示されている。また,被告標章1が同じくハッシュタグによりタグ付けされた「ドットバッグ」等の文字列と並列的に上下に並べられ,かつ,一連のハッシュタグ付き表示の末尾に「好きの方にも…」などと付されて表示されている。これらの表示は,掲載商品が被告自ら製造するものであること,「シャルマントサック」,「ドットバッグ」等のタグ付けされた文字列により示される商品そのものではなくとも,これに関心を持つ利用者に推奨される商品であることを示すものとも理解し得る。しかし,これらの表示は,それ自体として被告標章1の表示により生じ得る「被告サイトに掲載されている商品が「シャルマントサック」なる商品名又はブランド名である」との認識を失わせるに足りるものではなく,これと両立し得る。
これらの事情を踏まえると,被告サイトにおける被告標章1の表示は,需要者にとって,出所識別標識及び自他商品識別標識としての機能を果たしているものと見られる。すなわち,被告標章1は,需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であること
を認識することができる態様による使用すなわち商標的使用がされているものと認められる。これに反する被告の主張は採用できない。
参考 1 メタタグでの他人の商標使用
メタタグとは、ウェブサイトの HTML コードに<meta●●>と記述されたタグのことをいう。検索エンジンに「●●」の部分に記入した情報を認識してもらいやすくなる。
検索結果の表示画面にメタタグが表示されるか否かを基準に商標的使用の有無が判断される傾向にある(大阪地判 H17.12.8 判タ 1212 号 275 頁、東京地判 H27.1.29 判時2249 号 86 頁、大阪地判 H29.1.19 判時 2406 号 52 頁)。
2 検索連動型広告での他人の商標使用
検索連動型広告とは、検索エンジンにおいて広告主がキーワードをあらかじめ選択し、検索の際に当該キーワードを入力して検索すると、検索結果画面に広告主の広告が表示されるというタイプの広告である。裁判例では、商標的使用が否定される傾向にある(大阪地判 H19.9.13(平成 18(ワ)第7458 号、大阪高判 H29.4.20 判時 2345 号 93 頁)

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