代表取締役の解任について
タイトル..
代表取締役の解任について
ご質問内容
家族で会社経営をしており、父が代表取締役をつとめておりますが、先日医師から父が認知症であるとの診断を受けました。
まだ任期中ですが、この病気を理由に父を代表取締役から解任することは認められるでしょうか?
また、認められる場合、どのような手続きを行うべきでしょうか?
弊社は取締役会設置会社です。
当事務所の回答
1 代表取締役解任の可否について
結論として、認知症の程度が代表取締役の任務遂行ができないレベルであれば、解任は認められます。
代表取締役と会社との法律関係は委任契約の関係に立ちます(民法第643条)。
民法は、委任契約の解除に関して、「委任は、各当事者がいつでもその解除をすることができる。」(民法第651条第1項)と規定しますから、会社はいつでも代表取締役を解任することができます。
但し、注意が必要なのは、解任の時期です。
民法第651条第2項本文は、「当事者の一方が相手方に不利な時期に委任の解除をしたときは、その当事者の一方は、相手方の損害を賠償しなければならない。」と規定しています。
つまり、不利なときに解任したときは損害賠償(残任期間中の報酬相当額)を支払う必要があります。
もっとも、民法第651条第2項の但し書きは、「ただし、やむを得ない事由があったときは、この限りでない。」と規定しています。
つまり、お父様が、認知症により代表取締役の職務を遂行し得ないことが明らかである場合には、この「やむを得ない事由」ありと認められるので、お父様を解任することができ、この解任がお父様にとって不利な時期であったとしても、損害賠償をすることなく解任することができます。
2 解任の方法について
ご相談者様の会社は、取締役会設置会社とのことですので、
代表取締役を解任して、単なる取締役にする場合には、取締役会決議で代表取締役の解任を行うことになります。
次に、代表権だけでなく、取締役の地位も喪失させるということでしたら、株主総会を開いて、取締役解任決議を行うことになります。
3 その他の方法について
認知症という医師の診断書があれば、多くの場合は上記方法で問題になることはありませんが、診断書の信憑性や認知症の程度に疑義が生じた場合には、お父様が認知症により代表取締役の職務を遂行できるかどうかが後々争いになる可能性も僅かながら内包しています。
そのような心配がある場合には、後見開始申し立て、あるいは保佐開始申し立てを行うことも考えられます。
すなわち、お父様が、これらの申し立てにより、被後見人とされ、または被保佐人とされた場合には、取締役の欠格事由に該当することになりますので、法律上当然に取締役になれないことになりますから、損害賠償等々の問題は発生しないことになります(会社法第331条第1項)。
この場合には、お父様の住所地を管轄する家庭裁判所に、後見開始申立または保佐開始申立を行って、家庭裁判所の決定を求めて下さい。
診断書の信憑性や認知症の程度について疑義が生じないようであれば、取締役会決議または株主総会決議により解任をするのが良いと思います。
他方、お父様の財産管理の問題等も発生する場合には、この際、後見または保佐開始申立も行うのが良いのではないかと思います。
状況については、様々な考慮も必要な場合もございますので、ご遠慮なくご相談ください。
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