患者からの暴力・セクハラ等

患者からの暴力・セクハラ等

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患者からの暴力・セクハラ等

Q1 患者から暴力やセクハラを受けた場合、どのような対応をとるべきか。

1 患者からの暴力に対する対応について

(1)暴力を振るう患者の抑制

患者の抑制は、十分かつ適切な訓練を受けたスタッフが行うこととし、可能であれば、適切な訓練を受けた警備員をあてるようにする。その際には、できるかぎり1対1では対応しないようにし、他の職員に応援体制を整えるように依頼します。

(2)院内暴力が発生した場合の対応

ア 職員に対する治療

暴力の被害を受けた職員のカルテを必ず作成し、当該カルテには、患者から暴力を受けた場所、時刻、加害者、状況、傷害の程度・状態などを具体的に記載しておくようにする。

イ 報告書の作成・提出

暴力の発生について、直ちに、上司に対し、被害状況等に関する事項を口頭及び書面でもって報告する。

ウ 加害行為者に対する警告、診療拒否・退院の通告

医師法19条1項は「診療に従事する医師は、診察治療の求めがあった場合には、正当な理由がなければ、これを拒んではならない。」と規定していますが、患者が暴力を振るう場合には診療拒否の正当な理由があります。入院案内に、「暴力等により治療に協力的でない患者には退院を求めることがある」旨記載しておくことも有用です。

エ 暴行・傷害事件としての告訴

暴力行為が継続したり、暴力行為の程度が甚だしい場合には、警察に対して暴行罪、傷害罪、威力業務妨害罪として告訴、告発することができます。また、警察に緊急の対応ができるように要請することが必要な場合もあるでしょう。また、民事上、治療費等の損害賠償請求も可能です。

(3)被害を受けた職員に対するケア

職場における暴力の被害者は、短期及び長期の心理的トラウマや、職場復帰への恐怖に襲われることが多いと考えられる。そのため、必要に応じて、被害後の職員に対するカウンセリングを実施したり、被害にあった職員の業務への配慮を行ったりすることが求められます。

2 患者からのセクハラに対する対応について

(1)セクハラとは

セクハラとは、「性的嫌がらせ」と訳され、時・場所・相手をわきまえずに、相手方を不愉快にさせる性的な言動のことをいいます。

(2)院内おけるセクハラと考えられる具体例

患者からのセクハラとして考えられる具体例として、例えば、ⅰ.女性職員が男性患者からつきまとわれたり、待ち伏せされる、執拗に交際を要求される、ⅱ.性的な発言や質問をしたり、うわさを流したりする、ⅲ.女性職員の身体の一部をさわる等が挙げられます(いわゆる「環境型セクシュアルハラスメント」)。

(3)セクハラに当たるかどうかの判断基準

労働省(現在の厚生労働省)女性局長通達によると、セクハラに当たるかどうかの判断、すなわち「女性労働者の意に反する性的な言動」及び「就業環境を害される」の判断に当たっては、「平均的な女性労働者の感じ方」を基準とすることが適当であるとされています。「平均的な」という部分があるため、基準としては、若干不明確ですが、要は、自分の周りにいる妻、恋人、親友または子どもが、当該行為をされたら不快に思うかどうかで判断することができるでしょう。

(4)実際に発生したセクハラに対する対応について

ア セクハラ専門の相談窓口の設置

実際に患者の女性職員に対するセクハラが生じた場合、セクハラ被害を受けた当該職員がセクハラ被害を相談できる窓口がなければ、セクハラ被害を受けた職員は、一人で問題を抱え込んでしまって、当該職員の能力の発揮に重大な悪影響が生じてしまう危険も否定できません。そこで、院内にセクハラ被害を相談できる窓口を設置することが望ましいと言えます。
そして、相談担当者には、セクハラ被害に遭った職員が相談しやすいように、十分な認識・理解を有した女性を充てると良いでしょう。また、相談者のプライバシー情報の管理は厳格に行うこととし、相談をしたことによって、相談者に不利益が生じることがないよう十分に配慮する必要もあります。

イ 事実関係の確認

患者の女性職員に対するセクハラが生じた場合において、セクハラ相談窓口の担当者は、当該女性職員から被害の実情を聴取して、その事案に係る事実関係を迅速かつ正確に確認する必要があります。

ウ 情報の共有と防止策

セクハラ行為を行っているとの事実が確認された患者については、当該患者の看護に携わる職員の間において、セクハラ行為を行うおそれのある患者であるとの情報を共有し、女性職員に対する注意を促します。
また、患者によるセクハラ行為が行われやすい状況としては、患者と女性職員とが1対1になるような状況が考えられますので、その患者のいる部屋に女性職員が一人で来室しないようにするなど、患者によるセクハラ行為が行われることを未然に防止するように努めることが考えられます。

(5)セクハラ行為を行った患者に対する措置

ア 行為者に対する警告、診療拒否・退院の通告

イ 刑事

ストーカー規制法に基づき、ストーカー行為、つきまとい行為に関して警察に警告等の申出、援助を受ける旨の申出を行うことが可能です。どのような行為が対象になるかについては、資料をご参照ください。

ウ 民事

患者の職員に対するセクハラ行為によって、当該職員に財産的・精神的損害が生じた場合(例えば、セクハラ行為がきっかけで、トラウマを負ってしまったことによる通院費用や休業損害、慰謝料など)には、セクハラ行為を行った患者に対し、損害賠償請求を行うことも考えられます(民法709条、710条)。
もっとも、当該患者に対する損害賠償請求が裁判上認められるためには、その患者がセクハラ行為を行ったということなどを証拠によって証明しなければならないので、患者からのセクハラ被害に遭った際には、セクハラ被害について全て看護記録に時刻、言動等詳しく記載したり、場合によっては、録音・録画したりして、事前に証拠を収集しておくように努めます。

Q2 レントゲン検査等における女性患者に対する対応としては、どういったものが望ましいか。

1 考えられるリスク

レントゲン検査や超音波検査等を実施する際に、女性患者から検査技師によって、検査に必要もないのに見られたり、触られたりしたというクレームがなされるといったリスクがあります。また、クレームにとどまらず、患者が警察に被害届等を提出されるといったリスクもあります(なお、検査技師が検査に乗じて、女性患者へわいせつ行為を行った場合には、準強制わいせつ罪が成立します。)。

2 上記リスクに対する対応策

(1)女性技師による検査の実施

検査を行う技師が女性であれば、上記リスクは未然に防ぐことができると考えらます。

(2)女性職員を含む形での複数人の検査への同席

検査の際に女性技師がいない場合、女性患者と1対1の状況にならないように、女性の職員を検査室に同席させるようにします。

(3)女性患者の羞恥心に対する配慮

胸部等の女性患者が羞恥心を感じやすい部位に対し、検査・接触する際には、事前に声をかけた上で検査方法の説明をし、患者から了解を得るようにしておくことが非常に重要です。また、検査に支障がないのであれば、患者が羞恥心を感じないようにするためにバスタオルなどを活用することも考えられます。

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