新型コロナウィルスの感染拡大に伴う雇用調整等-企業が取り得る手段

新型コロナウィルスの感染拡大に伴う雇用調整等-企業が取り得る手段

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(1~3は従業員の就業形態、4~8は雇用調整、9~10は内定者への対応)

No. 採りうる手段 説明 メリット デメリット 給与等の補償 コメント
1 在宅勤務命令 従業員に在宅での勤務を命令する方法 ・業務と雇用は維持しつつ、新型コロナウィルスの感染拡大を防止することができる ・効率が低下する業務、在宅ではなしえない業務が存在する場合がある
・従業員の残業時間管理を徹底できないおそれがある
通常どおりの給与を支払う必要 在宅勤務が可能な業務については、在宅勤務命令を実施することを推奨致します。
2 短時間勤務命令 従業員の労働時間を、短縮する方法(時差出勤などに対応) ・業務と雇用は維持しつつ、新型コロナウィルスの感染拡大を防止することができる ・右記の通り、通常どおりの給与を支払う必要あある 使用者の自主的な判断で労働時間を短縮することとなるため、給与の全額支払いが必要(民法536条2項) 短時間勤務への切替が必要な場合、給与は全額支払う必要がありますのでご留意ください。
3 出勤停止命令 会社が従業員に、出勤停止を命令する方法 ・雇用を維持しつつ、新型コロナウィルス感染拡大を防止することができる
・雇用調整助成金を受領できる場合がある
・業務が停滞することに加え、給与補償等が必要となる場合がある(右記参照) ①事業が継続可能であるにもかかわらず使用者の自主的な判断で休業するという評価になる場合
→給与の全額支払いが必要(民法536条2項)
②労働者に対する安全配慮義務の履行として、または感染拡大の防止のため、休業の判断をすることは合理的であると判断される場合
→給与の6割の支払いで足りる(労基法26条)
③政府が非常事態宣言を発し、首都圏を封鎖するいわゆるロックダウン状況になり、従業員に働いてもらうことができないと判断される場合
→給与の支払いが不要※雇用調整助成金を受領できる場合がある
左記いずれに該当するかは個別具体的な事情により判断され一義的に明らかではないため、後日紛争になる可能性はあります。
4 派遣契約、業務委託契約の解除 派遣契約、業務委託契約を解除する方法 ・従業員の雇用を継続することができる
・契約内容によっては、契約解除に伴い違約金等の支払いが不要
・契約解除条項に該当するか個別の判断を要する
・契約内容によっては、契約解除に伴い違約金等の支払いが必要となる可能性がある
従業員ではないため、契約解除後の給与補償等は不要 業務内容・契約内容を吟味し、解除が可能な契約については解除を検討することを推奨致します。
5 退職勧奨 特定の従業員に対し、直接退職を持ちかける方法 ・従業員と個別に退職合意を得るため、後日紛争となる可能性が低い
・従業員全体ではなく、特定の従業員に働きかけが可能
・あくまで任意の交渉であり、強制をすることはできない(執拗な退職勧奨は、それ自体が不法行為を構成する場合がある)
・退職金の上乗せ、会社都合での離職票作成等が必要となる場合がある
合意退職となるため、退職日以降の給与補償等は不要 従業員数を削減しなければ会社の営業に支障が生じる場合に、整理解雇の前段階として実施することを推奨致します。
6 早期退職者の募集 全従業員に対し、早期退職者を募る方法 ・従業員と個別に退職合意を得るため、後日紛争となる可能性が低い
・従業員全体で不公平感がなく、従業員から不満が出にくい
・整理解雇をする前段階で早期退職者を募集することで、整理解雇が有効になりやすくなる(他の手段も実施したことを立証できる)
・退職してほしくない従業員が早期退職に応募した場合、退職を認めざるを得ない
・退職金の上乗せ、会社都合での離職票作成等が必要となる場合がある
合意退職となるため、退職日以降の給与補償等は不要 従業員数を削減しなければ会社の営業に支障が生じる場合に、整理解雇の前段階として実施することを推奨致します。
7 普通解雇 就業規則の規定に基づき、従業員を解雇する方法 ・就業規則の解雇事由に該当していれば、所定の手続を経ることで通常解雇が可能 ・新型コロナウィルスを理由とする解雇は通常就業規則に規定がないため、無理に普通解雇を行うと解雇無効を主張される可能性がある
・30日前の解雇予告、又は解雇予告手当(30日分の平均賃金)の支払いが必要
・解雇が有効であれば、解雇予告手当等の支払いのみで、その後の給与等は発生しない
・解雇が無効であることが裁判等で確定すると、それまでの賃金等を支払う必要が出てくる
解雇無効となる場合の支出が多額になる可能性があり、また訴訟対応等が必要となるため推奨致しません。
8 整理解雇 特定の従業員を強制的に解雇する方法(いわゆる「リストラ」) ・特定の従業員を解雇させることが可能
・退職金を規程以上に上乗せする必要はない
・整理解雇には判例上、厳格な要件がある(①人員削減の必要性、②解雇回避努力、③人員選定の合理性、④手続の相当性)
・30日前の解雇予告、又は解雇予告手当(30日分の平均賃金)の支払いが必要
・解雇が有効であれば、解雇予告手当等の支払いのみで、その後の給与等は発生しない
・解雇が無効であることが裁判等で確定すると、それまでの賃金等を支払う必要が出てきる
整理解雇は「最後の手段」と呼ばれる方法です。他の手段を尽くしても、従業員を整理解雇しなければ会社の存続が厳しくなってきた際に行うことを推奨致します。
9 内定者の自宅待機 採用内定者の就業開始日を遅らせる(一定期間休業させる)方法 ・従事すべき業務が無いにもかかわらず給与等を全額支払うことを回避することができる
・今後の状況に柔軟に対応すべく、採用内定は維持することができる
・右記の通り、休業補償が必要となる場合がある ・当該休業が使用者の責めに帰すべき事由によるものであれば、使用者は、労働基準法第26条により、休業期間中の休業手当(平均賃金の100分の60以上)を支払わなければならない
(使用者の責めに帰すべき事由か否かの判断はNo.3参照)
内定取消しよりも柔軟な対応であるため、まずは内定者の自宅待機を検討し、それでも業務の継続が難しい状況である場合には内定取消しをご検討ください。
10 内定取消し 採用内定者の内定を取り消す方法 ・新規労働者の受け入れを拒むこととなるため人件費削減に繋がる ・採用内定の取り消しは解雇とほぼ同様に内定者保護が図られている。具体的には、採用内定取り消しが客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は判例上無効となる。
・採用内定取り消しをする場合、ハローワークへの連絡等が必要となる
・内定取消し有効であれば、給与等は発生しない
・内定取消しが無効であることが裁判等で確定すると、それまでの賃金等を支払う必要が出てきる
内定者が従業員に近い立場で保護されるとはいえ、従業員よりは優先順位は低くなります。従業員の解雇をする前段階で、内定者の内定取消しをすること自体は現実的な選択と言えますが、内定者への説明の有無など内定取消し時の経緯や対応も有効性を判断するうえでの要素となっておりますので、内定取消しを行う際には事前にご相談ください。

 

 

 

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