株主総会の決議事項について弁護士が解説

株主総会の決議事項について弁護士が解説

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このような決議事項に注意しよう

定款変更など会社の組織・事業の基礎的変更に関する事項

定款変更など会社の組織、事業の基礎的変更に関する事項については、会社の重要な要素の変更となりますので、厳重な決議が求められています。

例えば、定款変更(466条)、事業譲渡(467条1項)、合併・株式交換・株式移転・会社分割(783条1項、795条1項、804条1項等)、資本金の額の減少(447条1項)については特別決議として3分の2以上の賛成を要します。また、定款を変更して株式譲渡に取締役会の承認を要するとするためには、株主の半数以上にして議決権を行使できる株主の議決権の3分の2以上の多数の賛成を要するとしています(309条3項1号、特殊決議)。

しかし、このような定めを認識せずに上記事項を普通決議で可決してしまうケースがよく見られます。重要決議についてはどのような要件で可決されるかよく確認した上で決議することが重要です。

計算書類の承認に関する事項

取締役会設置会社においては、取締役は、定時株主総会の招集通知に際して、株主に対し、取締役会の承認を受けた計算書類および事業報告を提供しなければならないとされています(437条)。

また、取締役は、計算書類および事業報告を定時株主総会に提出または提供しなければならず(438条1項)、計算書類は定時株主総会の承認を受け(438条2項)、事業報告の内容については定時株主総会に報告しなければならない(438条3項)とされています。

なお、取締役会設置会社においては定時株主総会の2週間前の日から、計算書類・事業報告、これらの附属明細書を5年間本店に、その写しを3年間支店に、それぞれ備えおいて株主および会社の債権者に閲覧させ、請求に応じてその謄本または抄本を交付等しなければなりません(442条1項、2項、3項)。

この附属明細書を作成せず、計算書類及び監査報告書を本店に据え置いておらず、謄本も交付せずに当該計算書類の承認決議を行った場合に、当該決議が決議取消しの訴えにより無効となった裁判例(福岡高裁平成13年3月2日判決)もありますので注意しましょう。

役員の選任・解任に関する事項

取締役・監査役の選任、解任については、株主総会の決議によって行われます(309条1項、329条1項、339条1項)。
取締役の選任、解任及び監査役の選任が原則普通決議で足りるのに対し、監査役の解任については特別決議を要する点に注意が必要です(343条4項、309条2項7号)。

取締役報酬の決定に関する事項

取締役の報酬は、定款で定めていない場合には、株主総会の決議で定める必要があります(361条1項)。
株主総会の決議では、

①金額が確定できるのであれば、報酬額
②金額を確定できないのであれば、報酬の算定方法
③報酬が金銭でない場合には、その具体的な内容を定める必要があります。なお、株主総会決議でその総額の最高限度を決め、各取締役に対する具体的な配分額の決定は取締役会の決議にゆだねる方法も認められており、実務上はこのような方法を採ることが通例です。

この具体的配分について、さらに取締役会が代表取締役などの特定の取締役に配分の決定を一任することも裁判例上認められています(名古屋高裁昭和29年11月22日判決)。

定款の定めまたは株主総会決議がない以上、取締役は会社に対して報酬を請求することはできません(最高裁平成15年2月21日判決)。
したがって、株主総会での決議を経ずに取締役の報酬を受領していた場合、後々、株主等の請求によってそれまで受領した報酬をすべて会社に返還しなければならなくなるおそれがあります。忘れた頃に多額の返済義務を背負う事態となることもあるのです。
 

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