平成29年度廃棄物処理法改正
タイトル..
平成29年度廃棄物処理法改正の主な内容
廃棄物の処理法及び清掃に関する法律(以下「廃棄物処理法」という)は、平成29年6月16日に公布され、平成30年4月1日に施行(一部については、平成32年4月1日施行とされております。)されました。今回の改正廃棄物処理法の主な内容として、
ⅰ.廃棄物の不適正処理への対応の強化
ⅱ.有害使用済機器の適正な保管等の義務付け
ⅲ.親子会社による産業廃棄物の一体的処理の特例の3点が挙げられます。
参照URL:環境省ウェブサイトより
https://www.env.go.jp/press/files/jp/105117.pdf
ⅰ.廃棄物の不適正処理への対応の強化
①食品廃棄物の不正転売事案の発生
平成28年1月に、愛知県に所在の産業廃棄物処理業者により、廃棄カツなどの食品廃棄物が食品として不正に転売されるという事案が発生しました。この産業廃棄物処理業者は、電子マニフェストに処理終了との虚偽の報告をしていました。
事件発覚後に愛知県が当該産業廃棄物処理業者に対して行った立入検査により、大量の食品廃棄物が放置されていることが明らかとなりました。
本件の食品廃棄物の不正転売事案の発生により、改正前の規定では、不適正な処理を行っている廃棄物処理業者の許可を取り消してしまうと、当該業者に対して改善命令等を下すことができないなどの不都合があることが判明しました。
②許可を取り消された者等に対する措置の強化
そこで、改正廃棄物処理法においては、廃棄物処理業の許可を取り消された者等が廃棄物の処理を終了していない場合には、都道府県知事等は、これらの者に対して、処理基準に従って保管すること等必要な措置を命じることができることとされていました。
それだけでなく、改正法では、許可を取り消された廃棄物処理業者等に対して、排出事業者に対する処理困難通知を行うことが義務付けられることとなりました。
③マニフェスト制度の強化
食品廃棄物の不正転売事案では、電子マニフェストに虚偽記載がなされていたことから、マニフェストの記載内容についての信頼性を担保するために、マニフェストの虚偽記載等に対して適用される罰則が、6か月以下の懲役または50万円以下の罰金から、1年以下の懲役または100万円以下の罰金へと厳罰化されました。
ⅱ.有害使用済機器の適正な保管等の義務付け
近年、不用品回収業者が家庭や事業所から排出された使用済みの電子機器を回収し、これらの機器等のスクラップ(雑品スクラップ)等がヤード等で集積され、環境保全措置が十分に講じられないまま、破砕や保管等されることにより、火災や鉛等の有害物質の漏出といった生活環境保全上の支障が発生しています。
そこで、改正法では、人の健康や生活環境に係る被害を防止するために、雑品スクラップ等の有害な特性を有する使用済みの機器(有害使用済機器)について、これらの物品の保管・処分を業として行う者(ただし、関係法令の許可等を受けた者等は除外されます)に対して、都道府県知事への届出義務を課し、政令で定める保管・処分に関する基準の遵守を義務付けました
有害使用済機器の対象品目としては、家電リサイクル法対象品目であるエアコン、テレビ、冷蔵庫、洗濯機と、小型家電リサイクル法対象品目である携帯電話端末、炊飯器、デジタルカメラ等の合計32品目が挙げられます。
参照URL:環境省ウェブサイトより
https://www.env.go.jp/recycle/yugai/conf/conf29-05/H290803_10.pdf
ⅲ.親子会社による産業廃棄物の一体的処理の特例
改正法では、親子会社が一体的な経営を行うものである等の要件に適合する旨の都道府県知事の認定を受けた場合には、当該親子会社は、廃棄物処理業の許可を受けないで、相互に親子会社間で産業廃棄物の処理を行うことを認める制度を創設しました。
具体的には、親子会社が一体的な経営を行うものであるとの要件を充たすには、①親会社が子会社の発行済株式を全て保有していること、②親会社が子会社の発行済株式の3分の2以上を保有し、かつ、親会社が子会社に対し、業務を執行する役員を出向させており、かつ、子会社が、かつて親会社と同一の事業者であって、一体的に廃棄物の適正処理を行っていたこと、という上記①、②のいずれかに該当することが必要となります。
この他に、産業廃棄物の適正な収集、運搬、処分ができる等の基準に適合するとの要件を充たすためには、親会社の統括的な管理体制の下で、認定に係る産業廃棄物の処理を行う事業者であることなどといった基準をクリアーすることが要求されます。
なお、親子会社による一体的処理の特例受けたとしても、認定グループ外の者に産業廃棄物の処理を委託する場合は、共同して、委託を行うとともに、マニフェストを交付する必要がありますので、委託基準違反やマニフェスト虚偽記載等の罰則規定に抵触することがないよう、これまでと同様に、コンプライアンスが求められることになります。
参照URL:環境省ウェブサイトより
https://www.env.go.jp/council/03recycle/y030-19b/ref01_2.pdf
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