廃棄物処理法に関する主な判例

廃棄物処理法に関する主な判例

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1.野積み不法投棄事件(最高裁平成18年2月20日判決)
2.委託処理基準違反事件(東京高裁平成20年4月24日判決)
3.野菜くず事件(東京高裁平成20年2月20日判決)

1 野積み不法投棄事件
(最高裁平成18年2月20日判決)

(事案の概要)

①量:アルミニウム再生精錬工場から発生した産業廃棄物=汚泥金属くず鉱さい等約1トンを、②期間:平成13年8月ころから11月ころまでの約3ヶ月間、7回にわたり、③態様:従業員に工場敷地内に掘られた穴への処分を予定してそのわきに無造作に積み上げた事案。

(争点)

工場敷地内の穴への処分を予定してそのわきに汚泥等を積み上げた行為が当時の廃棄物処理法16条の廃棄物を「みだりに」、「捨てる」行為にあたるか?という部分が争点となった。

(判決要旨)「捨てる」にあたるか。

その態様、期間等に照らしても、仮置きなどとは認められない+不要物としてその管理を放棄したものというほかないため、廃棄物を「捨てる」行為にあたる。

(判決要旨)「みだりに」にあたるか。

確かに、保有する工場敷地内であるが、法の趣旨は、生活環境の保全及び公衆衛生の向上を図ることにあるため、社会的に許容される余地なしと判断され、「みだりに」に該当する。

この判例から学ぶべきこと

①自社所有地内に
②廃棄物を
③廃棄目的で置いておくだけで
④その期間、態様によっては
⑤不法投棄とみなされる可能性
⑥5年以下の懲役若しくは1000万円以下の罰金、又はこれを併科

2 委託処理基準刑事事件
(東京高裁平成20年4月24日判決)

(事案の概要)

①解体工事請負会社が
②処理業許可を有しない会社に対し
③木くず合計約221立方メートルを
④無償で
⑤処分することを委託した

(争点)

産業廃棄物の処分は、許可業者に委託しなければならないと定める廃棄物処理法12条3項(当時)に反するか。つまり、木くずは再生利用可能あるが、産業廃棄物に該当するか?が争点にあたる。
無償譲渡→取引価値なし=産業廃棄物?
再生利用が可能な物=有価物?

(判決要旨)

廃棄物の処理業を許可制にした趣旨は、廃棄物を占有者の自由な処分に任せるとぞんざいに扱われて生活環境の保全公衆衛生の向上に支障が生ずるおそれあるため、処理の過程を行政の監視の下に置くことによって廃棄物の不法な投棄・処分を防止する、というもの。
市場での価値がない物は、ぞんざいに扱われて不法投棄等の危険性が高まるため、「取引価値」の有無は重要なメルクマールである。
※原則:処分委託業者が処分業者に有償譲渡できる場合

しかし、無償譲渡であっても再生利用を含む循環的な資源の有効利用が促進される必要性あり、取引価値の判断の一要素として当該物件の再生利用に関する経済活動の中で、「各当事者にとって一定の価値」があるかも加えるべきである。

取引価値ありとされるには、当該再生利用が
①製造事業として確立したもので継続して行われ
②ぞんざいに扱われて不法投棄の危険性がなく廃棄物処理法の規制を及ぼす必要がない場合
であり、再生利用目的があることを廃棄物該当性を否定する事情として考慮することは可能である。

本件事業は、製造業として確立し継続したものとなっていなかったため、廃棄物処理法の規制を及ぼす必要がなかったとはいえないことから、再生利用目的があったことが廃棄物性を否定する理由にならない、と判断された。

この判例から学ぶべきこと

①再生利用できる物で
②当事者同士で勝手に有価物と思っていてもダメ
③客観的に、製造事業として確立したもので継続して行われ、ぞんざいに扱われて不法投棄の危険性がなく廃棄物処理法の規制を及ぼす必要がない場合でなければ
④産業廃棄物とされ、法の規制を受ける可能性がある

3 野菜くず事件
(東京高裁平成20年2月20日判決)

(事案の概要)

①産廃の処理を受託した産廃等再生処理業者(許可有)が
②無許可業者と、野菜くず堆肥化作業に関する請負契約を締結(再委託?)
③無許可業者が土地に穴を掘り、ドラム缶30本以上フレコンバック30袋程度の野菜くずを投下※その際、木材チップは混ぜなかった
④ 14条1項違反により処分業許可取消
∵再委託の際、委託者から書面による承諾なし+再委託に必要な文書の不交付

(争点)

野菜くずが「産業廃棄物」にあたるか?
「再委託」に該当するか?

(判決要旨)

野菜くずが「産業廃棄物」にあたるか?
不要物に該当するか否かは、
①その物の性状
②排出の状況
③通常の取扱い形態
④取引価値の有無
⑤事業者の意思等
を総合的に勘案して決する。

①物の性状:破砕したもので、腐敗しやすく、現に腐敗臭を発生させていた
②排出の状況:本件野菜くずを排出量さえ把握せずに搬出した
③通常の取扱い形態:本件当時、本件野菜くずが堆肥原料等として有償取引されていたとの証拠はない
④取引価値の有無:月70万円以上の費用をかけて肥料化
⑤ 事業者の意思:本件当時、本件野菜くずを廃棄物と認識
※チップを混ぜずに穴に投下しており堆肥化目的と評価できず
∴野菜くず=動植物性残さ、食品製造業(指定業種)
上記のことから、「産業廃棄物」に該当すると判断された。

「再委託」に該当するか?

産廃処理の再委託禁止の趣旨は、無責任な業者等への再委託が、処理についての責任の所在を不明確にすることで、不法投棄等の不適正処理を誘発するおそれがあるから、本件はほぼ丸投げと判断され、法が禁止する「再委託」に該当する。

 
 
 

 

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