両罰規定と必要的許可取消
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両罰規定と必要的許可取消
(1)両罰規定とは
廃棄物処理法第32条は、法人の代表者や従業員が業務に関し違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、法人に対しても罰金刑が科す旨を規定しています。これを両罰規定といいます。
この従業員は、パートやアルバイトが違反行為を行った場合にも両罰規定の対象とされる可能性がありますから要注意です。
例えば、法人が雇用しているアルバイト社員が勝手に不法投棄をしてしまった場合には、当該アルバイト社員は、「5年以下の懲役若しくは1000万円以下の罰金」(廃棄物処理法25条1項14号)に処せられることになりますが、アルバイト社員を使用していた法人にも不法投棄の責任があると認められる場合には、当該法人は最高で3億円の罰金刑に処せられる可能性があります(廃棄物処理法32条1項1号)。
(2)両罰規定に該当した場合の必要的許可取消の怖さ
両罰規定により法人が罰金刑に処せられた場合には、当該法人は、廃棄物処理法7条5項4号ハが規定する「・・・罰金に処せられ、その執行を終わってから、又は執行を受けることがなくなってから、5年を経過しない者」に該当することとなり、廃棄物処理業に関するすべての許可が必要的に取り消されてしまいます。
両罰規定に該当してしまうと、廃棄物処理業を行うことはできなくなってしまいますから、経営においてコンプライアンスを徹底することは極めて肝要です。
(3)両罰規定に該当して必要的許可取消の対象とされる違反行為の例
以下に例示したケースでは、法人に罰金刑が科される結果、必要的に許可が取り消されることになります(廃棄物処理法32条、25~30条参照)。
注意したいのは、後述するように、所定の帳簿を備えず、記載せず、または虚偽の記載をして、行為者が30万円以下の罰金に処せられ、法人が50万円以下の罰金に処せられるという比較的軽微な事案でも必要的許可取消の対象とされるリスクがある点です。繰り返しになりますが、廃棄物処理業者は、些細なことと思われることまで徹底してコンプライアンスを貫徹していくことが重要です。
① 法人が3億円以下の罰金に処せられるケース(行為者は5年以下の懲役若しくは1000万円以下の罰金又はこれらの併科)
・廃棄物処理業の無許可営業
・排出事業者から気軽に頼まれて、廃棄物収集運搬の許可の範囲に含まれない産業廃棄物を運搬した
・積替保管の許可がないのに、自社敷地内で積替え保管を行った
・廃棄物の不法投棄
・勝手に山中に廃棄物を投棄した
・自社所有地に廃棄物を埋めて処理した等
・廃棄物の不法償却
・廃棄物を野焼きして処理した
・廃棄物を不正輸出
② 法人が1000万円以下の罰金に処せられるケース(行為者は5年以下の懲役若しくは1000万円以下の罰金又はこれらの併科)
・事業停止命令・措置命令に違反して廃棄物処理業を実行
・無許可業者に廃棄物処理を委託
・不正の手段により廃棄物処理施設の設置許可を取得
・廃棄物処理施設の許可事項を無許可で変更
③ 法人が300万円以下の罰金に処せられるケース(行為者は3年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金又はこれらの併科)
・廃棄物の処理を委託基準に反した方法で委託
・不法投棄又は不法焼却目的で産業廃棄物を運搬
④ 法人が100万円以下の罰金に処せられるケース(行為者は1年以下の懲役若しくは100万円以下の罰金)
・管理票を交付していない、又は管理票に虚偽の記載をして交付した
・運搬業者が管理票の写しを送付していない、又は虚偽内容を記載してその写しを送付した
⑤ 法人が50万円以下の罰金に処せられるケース(行為者は6月以下の懲役若しくは50万円以下の罰金)
・欠格要件に該当する事態になったのにこれを届けなかった
・処理困難通知を出さなかった。出したが、その通知を保存していなかった
⑥ 法人が30万円以下の罰金に処せられるケース(行為者は30万円以下の罰金)
・所定の帳簿を備えず、記載せず、または虚偽の記載をした
・行政からの報告徴収に対し、報告せず、または虚偽の報告をした
(4) 役員等の違法行為と必要的許可取消と両罰規定の関係
すでに述べたことをまとめると、役員等が禁固刑・懲役刑及び一定の罰金刑に該当する行為を行ったとしても、両罰規定に該当しないのであれば、その刑が確定して刑に処せられるまでは必要的許可取消の対象にはなりません。
したがって、役員等にこれらの行為が認められても刑が確定して処せられるまでに、解任や辞任等があれば、許可取消は免れることができることになります。
一方、役員等の行為が両罰規定に該当して法人が罰金刑に処せられた場合には、必要的許可取消から免れることはできないことになります。
十分に気をつけることが重要です。